明日は席替えである。 「さすがにミヤちゃんと四連チャン隣の席はないわなあ」 「せやなあ」 宮侑の方を向き頬杖をつきながらそう言えば、宮侑もヘラっと笑ってそう答えてくれる。 今のところ私と宮侑は三連続で隣の席である。もしも、明日の席替えで隣の席になったら四連続。まあそんな奇跡はないやろうけど。 「名字と離れてまうの悲しいわ〜」 目の下に手を当てて泣いてるフリをする宮侑。別に普通のリアクションだ。よくいる明るい奴で、これぞ男友達!みたいな対応である。なにも変なところはない。うん、変なところはない。 宮治に、宮侑が私のことを好き(オブラート)と聞いてからはや二日。本当にそうなのか?と思い、宮侑を観察しているのだがそんな様には見えなかった。ももちろん友達としては好かれてるとは思うけど、恋愛感情かどうかと言われれば微妙だ。 これはあれだな。宮侑が気持ちを隠すのがめっちゃ上手いか、宮治が勘違いして嘘を言ったかのどっちかやな。どちらかと言われれば後者な気がする。 私は不意に、以前犬に例えられたことを思い出した。こいつ、飼ってる犬のこととか周りにめっちゃ話してそうやもんな。それを聞いた宮治が勘違いした説、あると思います。 それに宮侑って、飼い犬に面白がってジャーキーとかおかしめっちゃあげてそうやしな。この間もらったプレゼントを思い出した。筆箱の中に入っている可愛らしいシャーペン。これはきっとお菓子とか餌付けみたいな感覚なのだろう。 「席替えめっちゃ嫌やねんけど…」 部室にはテンションが最大限まで下がった侑が項垂れて座っていた。その台詞だけで俺は色々と察する。 そういえばこいつと名字さん、席がずっと隣やったな。 「明日が来んどいてほしい…ほんまに嫌や…」 どうやら席替えは明日に行われるらしい。やっと名字さんがこいつの呪縛から解放されるのか。席が離れることによって、こいつから気持ち悪い話を聞く回数が少しでも減ったら良いねんけど。 「もう無理や、離れた瞬間に俺は死ぬ…」 「名字さんは離れたがってると思うで」 「なんでそんなん言うねん! 悲しくなるからやめろや!」 途端にギャーギャーと騒ぎ出す侑。なんや、元気やないかい。 俺はついこの間、名字さんに伝えたことを思い出す。侑に好かれていると聞いてかなり驚いていたようやけど、なんか進展とかあるんやろうか。こいつのこの感じやとなんもなさそうやな。名字さんが黙ってくれてるんやろうな。 名字さんに色々伝えたことをこいつに言おうとも思ったけど、やっぱり黙っとく。そんなんしてもこいつがショック死するか、怒り狂ったこいつに俺が殺されるかの二択でしかないもんな。危ない橋は渡らんどこう。 「まあ頑張れや」 「なあ治、神頼みってどこで出来るっけ!?」 アホすぎる。 ← → 戻る |