でも心はゆらめいた


最近影山にすごい見られてる、てか睨まれてる。

「……なに?」

「…あ!? なんだよ!」

「いやこっちの台詞……」

放課後、特に部活に入っていないのでさっさと帰ろうと荷物を片付けていたら、背中に視線を感じて。振り向いて見たら、案の定影山と目があった。目が合ったっていうか思いっきり睨まれてた。またかお前。

冒頭でも言ったように、最近影山からの視線が痛い。同じクラスで私が影山の斜め前の席、という理由もあるがとにかく視線を感じて振り向けばガン見されているのだ。なんでだ怖い。
おまけに、振り向いて目が合えばなぜか影山に、なんか用か、と尋ねられる。そして睨まれてる。いやそれ私の台詞ぅ。なんで私が聞かれるのか。

「なにがだよ」

「影山がこっち見てたじゃん」

「見てねえよ」

「ええ……」

「見てねえって」

「…わかったよ、ごめんね」

今日も見た見てないのやり取りをして、影山はさっさと教室を去ってしまった。その足取りは速いし顔もよく見えない。そんな影山を見て、何故かクラスメイトがヒューと口笛を吹いた。いや本当になんでだよ。

影山に見られるようになったのは先週からだ。ちなみにこれ、私の勘違いではない。
最初は気のせいかな?と思い、後ろの方の席にいる友達に一応確認してもらった。そしたら案の定、影山は私のことをガン見してるらしい。しかもかなりの高頻度で。早く気づいてあげなよ!とも言われたけど見られてるのにはとっくに気づいてるから。見る、っていうかもはや睨まれてるレベルだから。怖いんだよ。

元々、私と影山は同じ中学なのでそこそこ仲がいい。親友!とかではなくまあ普通に話す程度の仲だ。同じクラスになったこともあるし、こうして今も烏野にきて同じクラスになるぐらいには縁がある。なんなら割と喋る方だ。影山無愛想だけど話しやすいし面白いし。あれ? 割と仲良くない?
でもそんな毎日毎日見つめられるほどの仲ではない…はず。しかも本人に聞いても見てねえの一点張り。本当になんでだ?

不思議に思いながらも、荷物をまとめて私も教室を出た。廊下にはもちろん影山の姿はない。

廊下を歩きながら考えてみる。影山に見られてると思いはじめたのは、席替えのあとだった。なに、私の後ろ姿がそんなに変なの? 強烈に視線を集めるレベルで。いや、でも、影山以外から特に見られてないし。
ここまで見られてるとなると、さすがに理由が気になる。けど、でも当の本人に聞いても意味がないし。詰んだなこれ……。

考えながら歩いていると体育館が目に入った。確かあそこ、バレー部が練習してるところじゃないっけ? 見たことないけど。…………見てみる??

好奇心に駆られた私は、靴を履きかえて体育館に近づいてみた。ボールのはねる音と靴と床が擦れる音がよく聞こえる。やっぱりここっぽいな。どこか覗ける隙間ないかな。

体育館の周りを少し歩くと、扉が少し開いてるのを見つけた。そこからそーっと覗いて見る。バレーのネットと飛び交うボールが一瞬見えて、ここがバレー部の練習場所だと確信した。

……すご。

影山がいた。あとほかの部員も結構いた。全体はよく見えないけど多分試合形式の練習をしていて、影山が動き回っているのが見える。ボールがめちゃくちゃ速いのに影山はそれを綺麗にさばいていた。なんかほんとすごいな。

影山がバレーがすごく上手いというのは中学からよく聞いていた。けど、実際に見たことは無かった。でも今、バレーに詳しくない私でも、影山がとんでもないのがよくわかる。ええ、なんだこれ。かっこいいな。

そんなことを思っていたら、影山と思いっきり目が合った。何故か、やば!と思い扉から離れる。え、めっちゃ目合ったわ。
しばらくして覗き直せば、なんてことなくプレイする影山がいた。……気のせいか? いや、でもばっちり目が合ったしな。

なんだか気まずくなり、私はそのまま体育館を離れた。覗いてるのがばれたらきもいやつって思われるかもしれないし。あ、でも誰が覗いてるかまではわからないかな?
でも、何故かばれてそうで嫌だな。目が合ったの、気のせいでありますように。




「なんで昨日お前、部活見に来てたんだ。」

気のせいじゃなかった……。

昼休み、影山に呼び出された時点で嫌な予感はした。けどこんなド直球に聞く? てかわざわざ呼び出して聞くことかこれ??

「…えっと、たまたま体育館の近くを通って、ちょっと好奇心で見ちゃった」

「……あ!?」

「えっ、なんでそんな怒ってるの…」

意味がわかりません。

お弁当を食べようとした時に、話がある、って意味深な誘い方するから、一緒に弁当食べてた友達が顔赤くしてたよ。なんなら教室も少しざわついてたし。ついに告白か?っていう声も聞こえたし。てかあれ言ったの誰だよ。そんな告白とかロマンチックなものじゃない。現実は顔を険しくした影山が私を睨みつけてるだけだ。現実厳しい…てかなんでこんな睨まれてるの…なんかめっちゃ怒ってない…? こわ……。

「……てかよ!!!」

「え、あ、はい!」

急に大声を出されて思わず背筋が伸びる。えっ、なに? 怒られる? 本当に怒られるの?

「見に来るんだったら事前に言えよ!!」

怒鳴られると思い目をつぶれば、聞こえたのは想像もしない言葉だった。

「…え?」

恐る恐る目を開けて見れば、影山がすごい勢いで私を睨んでた。あ、やっぱ怒ってんのかこれ? なんでこんなめちゃくちゃ睨んでくるんだ?

「だから! 事前に言えって言ってんだ!」

「えぇ…なんで…」

「なんでって、お前!!」

ぎっと私を睨みつけて、叫んだ言葉を聞いて、さすがの私も全てを察した。そして今までのことが全部繋がったし、意味もわかった。

でも影山、


「ちゃんといいとこ見せたいだろーが!!」


……照れ隠しに睨むのは、さすがに分かんないから。


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