隣りあわせのわたしたち


私と二口は仲が良い。
元々中学が同じで、3年の時に一緒のクラスになった時に話すようになった。たまたま進学先の高校がかぶり、1年、2年ともに同じクラスになった。
他にも席替えで席が近くなったり、委員会が一緒だったり、帰る方向が一緒だからたまに2人で帰ったりもする。そりゃあ仲良くもなるわ。

二口は口の悪いやつだ。
しかし内側には熱いものを持っている。そして黒いものも持っている。私が中学の時に抱いた二口の第一印象は、顔はいいのに口が悪い奴だ。でもどんどん仲良くなっていくにつれてそうでもないことを知った。バレーには真剣だし男友達と話す時にはよく笑う。話せば話すほど色々な二口が見えて楽しかった。

普通ならそこで恋愛感情がわくのだろう。しかし私と二口はそうはならなかった。

「そういえば名字って二口と付き合ってねーの?」

掃除当番の中で、ゴミ捨てジャンケンに負けたのは私とこの男子。ゴミ袋を1人1つ持ってゴミ捨て場に向かっている最中にそう聞かれた。から私は即答した。

「付き合ってない」

この質問はよくされる。そりゃあ年頃の男女の仲が良ければ、周りはそう思うのだろう。
二口と私は完全に友達だ。よくある、友達以上恋人未満という関係ですらない。純度100%の友達。

二口は結構モテるらしい。強豪運動部のレギュラーだし顔もまあいい。しかしほんっっつとうに毒舌で、特に私に対してはあたりが強い。常に言葉のナイフだ。恋愛感情? 沸くわけないない。友達としてはもちろん好きだよ。

「あーやっぱり付き合ってないのか」

「やっぱり?」

「同じこと二口にも聞いたんだけど、」

「勇者かよ」

二口は私との関係を聞かれることを好まない。モテるらしくよく告白されては振っているそうだが、その時に大抵私とのことを聞かれるとのことだ。初期の頃、好奇心で「私のことなんて言ったの?」と聞いたら「女として見てない」と言われた。即答だった。
だから、きっとそんな質問をされたら二口は嫌がるだろう。嫌そうな顔をして、それはない、とでも言ったのかと思ったが

「二口がブチ切れてるの初めて見たわ」

「そんなに?」

そんな二口、私も見たことがない。



「二口って私のこと嫌いなの?」

次の日の朝。おそらく朝練終わりで教室にやってきた二口に私は声をかけた。

「なんで?」

いきなり何の話だ、という顔をする二口に私は昨日の話をする。

「ああ、それか」

思い出したようで、二口は苦虫を噛み潰したような顔をする。えっなにその表情。

「そんなに嫌だった?」

「嫌とか云々の前に、」

「うん」

「俺と名字が付き合うとか絶対ない」

「一刀両断かよ」

二口はばっさりそう切り捨てた。
いや、私も別に、二口と付き合いたいの!(はあと)とかそういうの無いからいいけど、ほかの人にそんな顔でそんなこと言ったら泣くからな。なんなら私ですらバッサリ言いすぎてちょっと傷ついてんだよ。やめろ。

「つーかお前と付き合うぐらいなら」

「うん」

「鎌先さんと付き合うほうがマシ」

「まじ?! そんなに??」

嘘でしょ。私はあの鎌先さんより嫌なの? 直接あったことはないけど二口がいつも楽しそうに文句を言う鎌先さんよりも私の方が嫌なの? それもう二口が鎌先さん大好きなだけでしょ? いつも鎌先さんの愚痴を言ってるけど楽しそうだもんね!!!

冒頭で私と二口は仲が良い、とか言ったけど本当に仲が良いのか不安になってきた。


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