おまけ


「というわけで、付き合いました。」

「やっとか。」

「やっとアルか。」

お互いに気持ちを伝えた夜から一夜明けて今日。部活も終わり、一応部活内恋愛だしと思い先輩方に報告をした。反応は予想していたがやはりそっけないものであった。
福井先輩と劉先輩には上記の発言に続いて今更かよ、とも言われる。いや、今更もなにも今までは友達的なアレでしたし…。

「なんでじゃあああああ!なんで紫原には恋人ができてワシには出来んのじゃあああ!!」

「ゴリラうるさいアル。」

ちなみにそっけない2人とは違い、岡村先輩は叫びながら嘆いている。そんなに頭を抱えなくても、岡村先輩はいい人だから恋人ぐらいすぐにできると思う。…多分。

「まあ、付き合ったからといって今までとあんま変わんないんですけどね。」

「お前らは元々付き合ってたみたいなもんアル。部活中もイチャイチャイチャイチャしやがって。」

「イチャイチャなんてしてませんよ。」

「しょっちゅー喋ってただろ。」

「あれはあいつが話しかけてくるからです。」

「それがイチャついてんだよ。」

「おかげでアゴリラが発狂してうざかったアル。」

「さりげなくワシをディスんのやめて!?」

「確かにこれから特に変わるとかなさそうだなお前らは。」

「でしょ?」

「無視!?」

そんな話をしてたその時。急にノシッと頭に重みが加わった。う、首縮む。

「ちょっと〜、人のに手出さないでよね。」

噂をすればなんとやら。顔をあげればいつのまにか隣には例の紫髪が見えた。体勢から見て、私の頭に乗っかっているのはどうやら肘らしい。人を肘置きにしないでほしい。

「手出してねーよ。話してただけだろ。」

「自意識過剰アル。」

「…まーいいや。部活終わったし、一緒に食堂行こー。俺お腹すいた。」

「え、今から?」

「片付けは済んだんでしょ?」

「済んでるけど監督に伝言あるから、先行っといて。」

「そんなの明日でいーじゃん。」

そう言って紫原は、頭に乗せていた手を下ろして私の手を掴んだ。そしてそのまま指を絡められる。えっ。
これは、俗に言う、恋人つなぎと言うやつだ。人前での急な行動に、私は驚いて一瞬思考が止まる。

「ほら行くよー。」

「ちょ、待ってってば!」

「…名前。」

「!」

真面目な顔で名前を呼ばれると、昨日のことがフラッシュバックして、何も言い返せなくなる。こ、こいつ…!絶対にわざとだ!絶対にわざとしてる!

結局そのまま私は、引っ張られるような形で食堂の方へと歩き出す。ふと先輩方の方へ目をやればポカンとした顔をしていた。
…私は悪くない私は悪くないぞ。これからも大して変わらないと思っていたから、こんな風に、あからさまに行動をとられるのは、私にとっても予想外なのだ。

繋いだ手が、とても熱い。


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