「うん、聞かれたよ。」 「…!」 逃げられない。そう判断した私が選んだのは正直に答えるということだ。下手に嘘をついたとしてもバレた時がやっかいだ。 「紫原は?」 そしてここで質問返し。目的はもちろん私が紫原をどう思っているか、それを聞かれないためだ。 “名字と付き合うとか、ありえねーって言った”まあ返ってくるのはこういうのだろう。 そう思っていたが、 「俺は…。」 「?」 紫原はモゴモゴと口を澱ませた。ん?なにを言いよどむことがあるのか。ありえねー、といつもみたいに言えばいいだけなのに。 そう思い首を捻っていれば、突然腕を引っ張られた。あまりの勢いに私はそのまま前のめりに倒れる。そして倒れた先にあったのは紫原の胸だった。やばい結構な勢いで激突した。これは紫原怒るやつだ。咄嗟に、ごめんと言い離れようとしたが、背に回された紫原の手によりそれは阻まれる。…え? 「ちょ、紫原?」 「…。」 もしかしなくても、これは、抱きしめられているというやつだ。今の状況を理解した瞬間、頬に思いっきり熱が集まった。待って、待って、急にどうしたの紫原。 「ねえ、」 「…好きって言った。」 「へ?」 「名字のことは、好きって言った。」 「……は、」 突然のその言葉に、私の脳内は真っ白になった。 ← → 戻る |