脈動が邪魔をする


「お前、紫原と付き合ってんだろ?」

ここは食堂。たまたま一人でいる福井先輩を見つけたので、失礼しますと前の席に座った。するといきなりこの質問である。

「おめでとうございます福井先輩。私がその質問をされるのは、ちょうど貴方で20人目です。」

「多いな。で、付き合ってんの?」

「答えはNOです。」

「マジかよ。」

そう、この質問は本当によくされる。クラスの子にもされたし部活の子にもされたし挙句の果てには担任にもされた。

「付き合うとかそーいうんじゃないですよ。」

「いやいや、お前毎日紫原の部屋行ってんだろ。」

「バスケと物理教えてもらっているだけです。」

「へー…、じゃあお前、紫原のことどう思ってる?」

どう?

ふむ、と私は考える。
確かに私は高校も部活も理科の選択も紫原に影響されて決めた。が、別に好きだからというわけではない。ただ、面白そうだったりなんとくなくだったり、そういうのだ。
そもそも、もう仲良くなって4年経つしお互いそういう感情はないはずだ。

…多分。

「ちなみに昨日、紫原にも同じこと聞いてみた。」

「うわ。紫原ブチギレませんでした?」

そんなんじゃねーし!!と怒る紫原が容易に想像できた。あいつ怒ると洒落にならないし凄く怖い。

「いや、違うかった。…聞きてーか?」

ニヤリ、と福井先輩は意地の悪そうな笑顔を浮かべた。急に心臓の拍動が大きくなる。
あまり気にしたことがなかった。気にしてはいけないようなことに思えたからだ。紫原は、私のことをどう思っているのか、

「…やめときます。」

「あ?なんだよつれねーな。」

なんとなく、聞いてはいけない気がした。
ただ私は、今の関係が変わるのが嫌なだけなのだ。


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