一言でいえば好奇心


「てなわけで、劉と一緒に氷室くすぐったんですけど失敗しちゃいました。」

「なにやってんだお前ら。」

馬鹿だろ、と頬杖をつきながら福井先輩はそう言い捨てた。

今は昼休み。今日は昼にレギュラーによるミーティングがあるので、私は遅刻を防ぐため部室にお弁当を持ってきて食べている。指定された時間まではまだ時間があり、部室に居るのは私と福井先輩の2人だけだ。
そして、そういえば氷室へのくすぐりのことを言っていなかったなと思い報告をした。

「とか言って、福井先輩もやってみたいんじゃないですか?」

福井先輩と私は、バスケ部悪戯同盟の仲間だ。もちろんその同盟には劉もいる。あと紫原も気が向いた時に参加している。活動内容としては主に岡村主将へドッキリを仕掛けたりしている。これはみんな岡村主将を愛しているからであって決して馬鹿にしているわけではない、とだけ言っておこう。

「…まーな。」

実際、氷室への悪戯話を聞いた時の福井先輩は、馬鹿だろとはいいつつも少し楽しそうな顔をしていた。
福井先輩は私と顔を見合わせニヤリと笑う。私も同じように笑った。悪戯同盟の標的に氷室が加わった瞬間だ。



あれから放課後。部活後の部室で私と福井先輩は息を潜めていた。

今回の作戦はこうだ。

「まず、氷室が部室にやってきたら俺が取り押さえる。そしたらお前がとどめをさせ。」

「了解です。」

名付けて、「福井先輩は先輩だから多少押さえつけたりしても氷室は怒れないだろう作戦」だ。名前のまんまだ。
今回は福井先輩が「わりい、言うの忘れてたことあるからちょっと部室戻ってきてくれ」というメールを送ることにより氷室を呼び出している。ちなみに今回狙っているのはわきだ。今度こそ大爆笑させてやる。

ガチャ

「「!」」

部室のドアが開いた。氷室が顔を出す。私達は必死に気配を消した。
誰もいないのが不思議なのか氷室はキョロキョロしながら部屋へと入ってきた。福井先輩と目を合わせて目線で意思疎通をする。

(今だ!)

福井先輩の目がそう言った気がした。
隠れていたロッカーの陰から福井先輩が飛び出す。氷室は一瞬戦闘態勢に入ったが相手が福井先輩だと分かり警戒を解いた。その隙をついて福井先輩は氷室を取り押さえる。
私は後ろから近づき勢い良く氷室のわきに手を突っ込んだ。

「なっ! は、ちょ、また…!、〜〜〜〜っ!!」

指をバラバラに動かせば氷室は声にならない声で悶え始めた。心なしかわき腹の時よりも反応がいいように感じる。よしいいぞ、笑え氷室!大声出して笑え!

「、っ!」

「あ、」

「ちょ、福井先輩!」

しかし氷室は器用に体を動かして、福井先輩の拘束から抜け出してしまった。あと少しだったのに!福井先輩もっとしっかり捕まえててよ!
氷室は私たちから少し距離をとったところに立ってこっちを睨んでいた。

「…なんで福井先輩まで協力してるんですか。」

「こいつにそそのかされた。」

「は!?福井先輩だってノリノリだったじゃないですか!」

人のせいにしないでください!と言えばわりいわりいと返ってくる。この言い方は絶対悪いと思っていない時の言い方だ。

「まあ、またリベンジしましょう。」

「そーだな。」

「え?…ちょっと待って、」

まだあるの?

そう言う氷室を、私たちは前回と同じようにスルーした。


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