「最近赤司とどんな感じ?」 「めっちゃ質問される。」 「え?」 1人で食堂に行けば同じく1人のこたちゃんと出会い、流れで一緒にご飯を食べることになった。 「質問? どーいうことそれ。」 こたちゃんは不思議そうに首をかしげた。 「えーとね、例えば先週だと…」 「お前に兄弟はいるのか。」 「兄がいます。」 「一番上ではないんだな。」 「はい。あ、上っぽく見えます? 姉オーラ溢れてます?」 「馬鹿さなら溢れてる。」 「ひど! 赤司先輩はどうなんですか?」 「俺は一人っ子だな。」 「ぽいですね。確か赤司先輩のお父さんって超すごいんでしたっけ。」 「どこで聞いた。」 「クラスの子が噂してました。」 「そうか。」 「実際すごいんですか?」 「まあ、そうだな。お前の親はどうなんだ。」 「うちですか? 父は公務員で母は専業してます。」 「そうか…堅い職なら良い。」 「? なんでですか?」 「うちは名家だからな。」 「?? 自慢?」 「親戚でうるさい奴らもいるんだよ。」 「??? 大変ですね?」 「まあ、名字はまだ知らなくていい。」 「あっ、馬鹿にしてる!」 「してない。」 「した!」 「みたいな感じ。」 「え、」 「ひどくない? 馬鹿が溢れてるってなに!」 「え、てか、そこ?!」 思い出して少し腹が立ってきた。一方こたちゃんは驚いた顔をして固まっている。ん? どうしたの。 「こたちゃん?」 「ほ、他には…?」 「え?」 「他にはどんな会話してんの。」 震える声でこたちゃんが聞いてくる。他? 他にはえーっと、 「あ、一昨日の話なんだけど…、」 「お前の行動には品がない。」 「いきなり失礼ですね。」 「これでも読んでおけ。」 「『3ヶ月でわかる大人のマナー』…? てか分厚っ。」 「来月までに頭に叩き込んでこい。」 「3ヶ月でって書いてるのに!? てかなんで覚えなきゃいけないんですか。」 「来月に我が家でパーティがある。」 「ほお。」 「各界の著名人も多数参加する。」 「とんでもないですね。」 「参加するならマナーは必要不可欠だ。」 「大変ですね、頑張ってください。」 「何を言ってるんだ、お前も参加するんだぞ。」 「えっ、」 「社会経験の一環だ。」 「ちょ、無理無理無理。」 「参加費なら気にしなくてもいい。」 「そこじゃないです。」 「服も必要なら貸出用がある。」 「そこでもないです。」 「どこだ。」 「もっとラフなパーティに誘ってくれません?」 「…来たい気持ちはあるんだな。」 「まあ楽しそうですし。」 「なら来月のやつも平気だろう。」 「なんでそんなそれを推してくるんですか?」 「…父も参加するからな、会ってみろ。」 「なんのために!? 怖すぎでしょ!」 「マナーさえあれば大丈夫だ。」 「そういう問題…?」 「だからその本の内容を覚えろ。」 「ええええ。」 「ろくな礼儀がなければ俺がフォローしないといけなくなるだろう。」 「あ、フォローしてくれる前提なんですね。」 「基本したくない。」 「ひどっ!」 「ちょ、う、うわあああああーーっ!!!!」 「え! なに、どうしたの!」 話し終えたところでこたちゃんが突然叫び出した。頭を抑えて机に突っ伏しながら。 「まわりかこまれてる!!めっちゃ準備されてる!!!」 「どういうこと?! てかこたちゃんうるさい!」 「なんでパーティ断らないの!?」 「なんか楽しそうだなって。」 「馬鹿! 本当に馬鹿!!」 「こたちゃんに馬鹿って言われたくない!」 「そこじゃないし!!」 どうりで最近赤司の機嫌がいいと思った! とこたちゃんは叫んだ。かと思えばううううと唸って頭をガリガリとかきだす。どうしたんだろう、挙動不審かな。 「こたちゃん落ち着いてよ。」 「もうどうなっても俺知らないからね!!」 「どういうこと?」 「うるさいばーか!」 そんなこたちゃんの忠告の意味に気づくのは、それから数年後のことだった。 ← 戻る |