「俺の…勝ちだな。」 赤司先輩がドヤ顔でそう言い、オセロ石をひっくり返した。わー、赤司先輩のドヤ顔とか初めて見たー。…じゃなくて! 私は思わず目の前のオセロ盤を凝視した。一面真っ黒だ。そして、今回は、私が白で、赤司先輩が…くろ。え、え、……オセロで負けた?! 「なんですと!?」 「うるさい。」 「嘘だ!!」 「嘘じゃない。」 「もう一回です! もう一回しましょう!」 「分かったから静かにしろ。」 ザーッとオセロ盤をひっくり返して次の試合の準備をする。嘘だ…嘘だ…オセロで負けるなんて! そうだ、きっとこれはたまたまだ、次はいつも通り勝てる。とそう自分を励まして次の試合に臨んだ。 「もう諦めろ。」 「う、」 「お前はもう勝てない。」 …負けた、立て続けに負けた。目の前のオセロ盤は私の5連敗目を告げていた。そ、そんな…! 「ううううう…! 悔しい……!」 「もう時間も遅い。負けを認めて早く帰れ。」 「…………はい。」 なにこれとても辛い。将棋どころかオセロまで負けるとか……ていうか、ちょっと待って。 私は今、赤司先輩に勉強を教えて貰っている。でもそれは私がオセロに買ったらという条件の元での話だ。ということは、オセロに負けてしまった今、 「もうこれで部屋通いも終わりですね……。」 ということだ。え、やばくない? 試験明後日からだしやばくない? でも文句を言っても仕方が無い。何故ならそういう約束なのだから、明日は今まで教えてもらったところを自力で復習するしかない。大丈夫かな。 「…いや。別に来てもいい。」 ポツリ、と赤司先輩がそう呟いた。 「へ?」 思わず聞き返してしまう。驚いてしまった。だって、赤司先輩って最初私が部屋に来るの嫌がってたし。てっきりもう二度と来んなぐらい言われると思ってたから。 「いいんですか?」 「…試験が厳しそうだからな。」 「ま、まあ。」 あ、赤司先輩の頬が、何故か少し赤く染まっている。え、ちょ、なんで。 …突っ込むとめんどくさいことになりそうなので、勝てた高揚感によるものと勝手に納得することにした。うん、きっとそうだ。 後日、今日の出来事をこたちゃんにいえば、な、名前が赤司に食われる!とか騒がれた。別に、そんなのじゃないのに。多分。 ← → 戻る |