今日は日曜日。珍しく遊ぶ用もバイトもないので、私は1人家でゆっくりしていた。 今は大学1年の冬。昼間でも外は冷え込んでいて、外出する気分にはなれない。一人暮らしの部屋はテレビの音だけが響いていた。 そんな時、 ピーンポーン 「ん?」 インターホンのなる音が聞こえた。 宅配便とか頼んでたっけ? と1人首をかしげつつ、玄関へと向かう。扉を開けるとそこにいたのは、 「……。」 「……。」 「……。」 目の前の光景が理解出来なくて、私は黙って扉を閉めようと 「なぜ閉めるのだよ…!」 したのだけど、目の前にいる真太郎が足を挟んできてそれは阻まれた。……なんでいるの。 真太郎は、私の彼氏だ。お互い一人暮らしをしている身だから、休みがあえばよく互いの家で遊んだりしている。ただ、今は風邪を引いているから遊べない、というメールが昨日来たばかりだ。つまり、真太郎は今風邪をひいている。 「看病されに来たのだよ。」 何を言っているんだ、こいつは。 真太郎の思考回路が常人のそれとはかけ離れていることなんて、とっくに知っている。それでも、これは予想外すぎるでしょ。 真太郎は所謂ちゃんちゃんこというものを着ていた。おでこには冷えピタを貼っていて頬は少し赤い。あと眼鏡越しの目は少し潤んでいるように見えた。完全に風邪じゃねーか。家でひとりで寝てなさい。 あと、1つ気になるのは真太郎の手にある大きなトートバックだ。 「この中には冷えピタとスポーツドリンク、あと俺の着替えが入っている。準備は万全なのだよ。」 私の視線に気づいた真太郎は得意げにそう言う。いや、そういうこっちゃねーのだよ。 「……とりあえず、中に入りなよ。」 これ以上風邪人を外に出しておくわけにはいかない。穏やかな休日に別れを告げて、私は内心ため息をついた。 一体、どこの世界に自ら看病されに来る病人がいるのだろう。 部屋で私のベットを占領している真太郎は、辛そうに呼吸をしながら眠っていた。私はそんな真太郎の側に腰を下ろして看病をする。看病と言っても、顔にかいている汗を拭いたり、スポーツドリンクを飲ましてあげたり、たまに氷枕を変えたり、とそういうものだけど。 「しんどいの?」 「当たり前だ。」 苦しそうな顔をして、真太郎はそう言った。 「そう…。」 「…。」 「…なに?」 真太郎が無言で私を見つめてくる。その目があまりにも真剣で、少し戸惑った。表情を変えることなく真太郎はゆっくりと口を開く。 「……お前が元気なのを見てると、腹が立ってきたのだよ。」 「へ?」 ぶすっとした顔で真太郎はそう言った。……腹が、立つ? なんだそれ。腹が立つって、なに、とんだ八つ当たりじゃん。 文句を言ってやろうと思っていたら、真太郎がふらふらと起き上がり始めた。 「ぐ、」 「ちょ、寝てなよ!」 その様子があまりにも辛そうだったから、私は慌てて肩を押して寝かそうとした。のだが、 「…やかましいのだよ。」 「え、」 そう言って、何故か胸ぐらをつかまれた。強い力で握られたせいで、Tシャツの生地にしわが走る。 「う、っわ!」 そしてそのまま、体を思いっきり引き寄せられた。いきなりのことに体がついていかず、なすがままに前に倒れる。ベットに膝をついたせいで鳴ったスプリング音が、部屋に響いた。 気づいたらすぐ目の前には真太郎の顔がきていて。ぶつかる!と思った私は慌てて真太郎の胸を押して、衝撃を和らげようとした。のだが、その瞬間、後頭部がなにかに覆われる感触。 それが真太郎の手のひらだと気づいて。真太郎の顔との距離がゼロになった。そして、そのまま、唇が触れ、る。 え、…ん? 「お前も、……苦しむのだよ。」 「……へ、」 ちょっと待って。 は、キス…された? そのことに気づいた瞬間、ボッと火がついたように顔が熱くなる。慌てて真太郎から距離をとった。 「な、なに! 急に!!」 「キスをすると、風邪がうつるというだろう。」 「は!?」 「じゃあ俺は寝るからな。」 「ちょ!!」 そう言って真太郎は布団に潜っていった。あっけに取られている私を残して。 しばらくすると静かな寝息が聞こえてきて、本当に寝たんだということがわかる。……待って、私どうしたらいいの。 もう熱が出たみたいに、顔が熱いんだけど。 ーーーーーーーーーーー リクエスト消化遅くなりすいません! 酔ってる時や体調が悪い時に積極的になる緑間いいですよね! 書いていてとても楽しかったです。素敵なリクエストくださった冬真様、ありがとうございました〜! ← 戻る |