番外編


付き合った次の日のあの高尾のバカ発言のせいで、私たちはクラス公認カップルになった。のだけど、

「お、彼女じゃん。」

「? …どうも。」

「誰?」

「ほら、高尾の。」

「ああ。」

そう言って目の前の男の人はにやっと笑った。廊下を歩いてたら男の人2人組に声をかけられたのだが、全く面識のない人たちだった。…おそらく2人とも上級生で、多分バスケ部の人なのだろう。はあ、またか。

なぜか、私たちはバスケ部でも公認の仲らしいのだ。そのせいで、最近やたらとバスケ部らしい人に声をかけられる。
てか公認もなにも私バスケ部の人とほとんど関わりないんですけど…。


「これってなんでなの?」

放課後、今日は緑間と日直なので残って日誌を書かないといけなかった。何故か高尾もいるけど。でもまあこれはいい機会と思って2人にこのことを聞いてみた。
私が今までバスケ部の人に話しかけられてきた話をすれば、緑間は少し目を見開き高尾は固まった。えっ、…何その反応。

「どうしたの。」

「どうしたもなにも、…高尾がやらかしただけなのだよ。」

「やらかした?」

その言葉が気になって、ぐっと緑間のほうへ体を乗り出す。やらかしたってなんだ、緑間にそこまで言わすなんて高尾は一体なにをしたんだ。純粋な好奇心で緑間に続きを話すように促した。

「前に先輩と話し「ってわー!わー!!」

緑間が何かをいおうとした瞬間、固まっていた高尾が復活して突然叫び出した。ちょ、うるさっ。

「高尾うるさい。」

「うるさいのだよ」

「真ちゃん! 絶対言うなよ?!絶対言うなよ!!!!」

「フリか?」

「どこでそんなノリ覚えてきたの?!!」

「フリなんだな?」

「違うっつーの!!!」

わああああと叫びながら高尾は頭を抱えた。うん、…確かにどこで緑間がそんなリアクション芸人みたいなノリを覚えてきたのかも気になるけど、それよりもなんでバスケ部公認になったのか知りたい。いや、緑間のこのノリも気になるけども。一足遅い高校デビューか?

結局その後、何回も聞こうとしたけど高尾の妨害が激しすぎて聞くことかできなかった。なんなの、そんなに言いたくない話なの。


しかし、その程度で諦める私ではない。むしろ、隠されたら隠された分だけ気になるのが人間ってもので。

「緑間〜。」

昼休み、高尾が数学のノート未提出とかなんとかで職員室まで呼び出されていたのを見て、ここぞとばかりに緑間に話しかける。てか高尾なにしてんの、ノートぐらい出せ。

「何か用か。」

「高尾が前隠そうとしていた話、教えて?」

ね? と両手を前で合わせながらお願いすれば、緑間はため息1つついて、そして口を開いてくれた。うん、緑間なら話してくれるって思ってた。私信じてた。

「お前らが付き合ってすぐぐらいのことだ。

部活中に、お前今リア充なんだろ? と高尾が先輩たちに絡まれていて、それに対して高尾は「そうっすね」などとヘラヘラデレデレしていたことがあったのだよ。 それだけでもあれだったのだが、突然高尾が「彼女のこと名前で呼びたい」とか言い出してな。先輩達は呼べばいいだろと言っていて俺も全くの同意見だったがここでまた高尾が恥ずかしくて呼べないなどとぬかし始めたのだよ。

そしてそれから何日も何回もそのような反応を高尾がとったせいで、お前の存在が部活内で知れ渡っていったのだ。」

「……ひとつ言っていい?」

「なんだ。」

「女子か!!」

そうとだけ叫んで私は緑間の机に突っ伏した。うううううわあああああなんだあの子!!女子か!!! くっそ可愛いな!!
俺の机に顔を伏せるのはやめるのだよ、といった声が上から聞こえたが無視だ。ほんと何なのあの子! 名前で呼びたいって、呼べばいいのに、呼べばいいのに!! それで悩んでるとか、ほんと女子か! 可愛すぎか!!
相変わらず私の彼氏がバ可愛すぎて生きるのがとても辛い。いっそのこと性別交換してあげたい。

うううと唸っている私に対して、緑間はまたため息をついた。ため息多いね、幸せ逃げるよ。

「…この話には続きがあるのだよ。」

「…え?」

その言葉を受けて私は顔を上げる。…続き? って、これ以上まだなんかあるの?

「先輩が一度「お前まだ高尾って呼ばれてんの?」と聞いた時があってな。その話の最中に高尾が、下の名前で呼ばれたいと言ったのだよ。じゃあ本人にそう言えと突っ込まれていたが、当の高尾は恥ずかしくて言えない!などとぬかしていた。」

「女子か!!」

再び緑間の机に突っ伏せば今度はゴン!と重い音がなった。駄目だ、なんだあの子可愛すぎるわ。思わず頭打ちつけてしまったわ。

「全く、どうにかするのだよ。」

緑間は、本日何度目かわからないため息を吐いた。全く、うちの彼氏がご迷惑かけております。

それにしても名前呼びか。言われてみれば私、高尾のことはずっと高尾呼びなんだよね。なんかしっくりくるっていうか、高尾も私のこと名字で呼んでたし。…うーん。

「ちょ、2人でなんの話してんの。」

声の聞こえた方に向けて顔を上げれば、そこにはこちらへ向かって歩いてくる高尾の姿があった。あ、戻ってきた。

俺抜きで仲よさげにさあ、と高尾は続ける。その顔は少し不満げで、私はそれを見てちょっとこいつ妬いてるなということを察した。緑間にまで妬くとかほんともう可愛い。それ以外何も言えない。

「で、何の話?」

「べっつにー、」

ここで突然、むくむくと変な悪戯心が湧いてしまった。にやける口元がバレないよう、私は唇を尖らせて続きを言う。


「和成の話、してただけだよ。」

「…………えっ。」


不機嫌な顔から一転。私の発言を受けて反応するまでかなりの間が空いて、そして顔がぼんっと赤く染まり動きが止まった。え、あの、ちょ、え? と呟きながら戸惑ったように目線だけがあちこち動いている。

あー、もうほんっとうちの彼氏可愛い。



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