番外編


あれから1年以上たち私は大学生になった。ちなみに私は清志くんと同じ大学に通っている。というのも、高3の4月に俺ここ行くからお前も来いと誘われたからだ。断るなんて選択肢はなかった。

今まで、私たちはプラトニックなお付き合いを続けていた。何故なら、清志くんが部活で忙しくて、そういうことをする時間がなかったからだ。まあキスはすごいされたけど。一緒に歩いてると絶対手を握られたけど。手が早いのか遅いのか私には判断出来ない。

そして、大学生になって約2ヶ月。ついにその日はやって来た。

「えっと…、」

「……。」

「清志、くん?」

ここは、清志くんの家。
清志くんの実家は少し交通の便の悪いところにあって通学に不便なので、大学に入ってすぐに清志くんは一人暮らしを始めた。清志くんの家は大学から近いし、清志くんの方から来いよと言われるので、空きコマなどによくおじゃましている。

そして今日、金曜最後の授業が終わり、私は清志くんに頼まれて夜ごはんを作りに来た。大学が始まってからこうやってご飯作りを頼まれることはよくあった。料理を作るのは好きだし清志くんは美味しそうに食べてくれるしで、そのことについての問題は全く無い。むしろ、喜んでくれる清志くんが見れて私も嬉しかった。

でも、

「…あの、」

「……。」

「近い…から、どいて、ください。」

今、何故か私は清志くんに押し倒されていた。
清志くんの家でご飯を作って、一緒に食べて、テレビを見ながらくつろいでいただけなのに、どうしてこうなった。
テレビを見ている最中に清志くんにそこ座ってとベットを指さしながら言われたのが、そもそもの原因だ。不思議に思いながら座ったら覆いかぶさってこられたのだ。…うん、あれはどう考えてもフラグだった。何故座ったし私。

なんて冷静に今までの経緯を思い出しているが、ぶっちゃけ頭がパンクしそうだった。こういうことをされるのは初めてだし、枕元からも目の前からも清志くんの匂いがするし、…駄目だ全く落ち着かない。おまけに清志くん、押し倒してきてからなにも喋らないし。テレビも消されたから部屋は無音だ。
顔の距離がまるでキスする時のように近くて、拷問のように感じた。清志くんの顔は言わずもがな美形だからこんな近くにあると心臓にとても悪い。
暴れる心臓を押さえつけて、私はなんとか声を出す。

「き、よしくん。」

「……なに。」

今までずっと黙っていた清志くんが口を開いた。その声がいつもよりも少し低くて、ドキッとする。正直、天井を背景に見える清志くんの色っぽい顔とか、少し身じろぐ度に軋むベットの音とか、色々もうあれすぎて爆発しそうだった。駄目だ、今すぐ逃げたい。

「ちょ、待って、」

「どんだけ待たせんだよ。」

「ひ、」

瞬間、清志くんの手が私の服の中に入ってきた。その手があまりにも熱くて、思わず変な声が出る。
清志くんの手は腰から下着の下まで這い上がってきて、とまった。触れられているところがじわりと熱を持ち出す。その感触に背中が総毛立つのを感じた。

そして清志くんはいきなり、私の唇から少し横にそれたところに口づけをしてきた。その一瞬の行動に呆気にとられていると、清志くんはそのまま私の耳元に口を寄せた。呼吸をする度に耳にかかる吐息がくすぐったくて思わず身じろぐ。

「…でも、お前が嫌ならやめる。」

俺は限界なんだけど、と続けざまに耳元で囁かれて、思わず腰が抜けそうになった。だから、だめだって。ほんとだめ、その声はずるい。反則だ。
だって、

「あ、の、」

「…なに。」

「い、嫌じゃないよ。」

…断れなく、なるから。

「優しくしてくれるなら、…いい。」

うまく目が合わせられなくて不自然に視線が泳いだ。きっと今の私はとびきり変な顔をしてるに違いない。

清志くんは一瞬目を丸くしたが、すぐに微笑んで私に1つキスをした。そのキスがあまりにも優しくて、全身が、気持ちが、溶けそうになる。
服の下に入っている手がゆっくりとお腹をなで始めた。相変わらずその手はとても熱くて、そして、なでられたところも熱が移るようにどんどん熱くなっていく。その手にびっくりして少し声が出たが、それを聞いた清志くんには楽しそうに笑われた。その笑い声すら色っぽくて、ほんと、全身が沸騰しそうだ。

そもそも、肌を撫でる手の熱さを嫌と感じなかった時点で、私の答えは決まっていたようなものなのだ。

「…いいんだな?」

そう聞かれて、私は恐る恐る清志くんの首元に手を回した。これが、返事として伝わったらいいのだけど。


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