なかに隠した純情


あれから家で1人、告白されたことについて悶々と考えた。

いつもと違う強気な口調を思い出して、もしかしてバツゲームとかで言わされてる? とも思ったが桜井は決してそんなことする奴じゃない。少しでも疑った自分を反省した。
そしてその時の桜井の表情や言動を思い出して顔が赤くなったなんて秘密だ。そう、あのあとは…



「桜井はさ、友情と恋愛がごっちゃになってるんだよ、多分。」

諦めません、と言われてから2人の間にはしばらく無言が続いた。のだが、私は乾いてはりついたように感じる喉をなんとか動かして、こう言った。

そう、これに関しては私にも責任があると思う。いくら親しいとはいえ、私があまりにも近い距離感で接したから友達の好きと恋愛の好きを勘違いしてしまったんだろう。桜井は女子の友達じゃなくて男子の友達だったんだ。

そういう意味を込めて言ったのだが、何故か桜井の表情は不機嫌に変わった。

「…どうやったら信じてもらえるんですか。」

「え?」

「僕は本気です。勘違いとかじゃ、ないもん。 」

ずっと掴んだままだった私のカーディガンの裾から手を離して、桜井はきっぱりとそう言った。私はなんて反応していいかわからなくて、思わず俯いてしまう。

「…帰りましょうか。」

「え、」

「もう遅いですしね。」

さっきまでの態度とは一転、桜井はいつものふにゃっとした笑顔でそう言った。

「う、うん。」

なんとか頷いて、私たちはそのまま教室を出たのだった。



ここまでが昨日の出来事だ。そして、

「昨日の世界スケートはやっぱ良かった!」

「テレビ越しでもすごいのが伝わってきますよね。」

あれから放課後になり、下校中の私の隣には桜井がいた。何でも今日は体育館整備があり部活が休みらしい。
だから一緒に帰りましょう、と帰る準備をしている時に突然言われて、まあ驚いたこと。昨日のこともあり気恥ずかしくて断ろうとしたけど、桜井が有無を言わさぬ圧力で行きましょうかと言ってきたせいで完全に断るタイミングを失った。桜井ってあんな笑顔で圧力かけること出来たの…使う場面完全に間違ってるでしょ。

ただ、この下校には大きな問題があった。私は実家から通っているけど、実は桜井は寮生なのだ。
うん、一緒に帰りましょうとか意味がわからない。お前んちすぐそこだろ!
それについて文句をいえば「僕が一緒にいたいだけですから」と言われてなにも言えなくなった。弱気じゃない桜井がつらい。


「こう、猛スピードで滑ったかと思ったら、急にバッと飛ぶのがすごいよね!」

そう言って、私は歩きながらスケート選手のように飛ぶ真似をする。桜井は結構似てますねと小さく笑いながら言った。やった、お墨付きもらえた。

昨日はスケートの世界選手権がテレビで放送されていて、私たちは今日一日中その話をしていた。てか主に私がその話題ばっかり振っていた。
まあ、昨日のことをほじくり返されたくないというのもある。やっぱり恥ずかしいし。

「でもやっぱスケートは回る演技が一番かな〜。」

「え、」

そう言って次は一回転。最後少しふらついたけどなかなか綺麗なスピンが出来たと思う。
途中でスカートが少しめくれたけど、中に体操服ズボンはいてるしまあいいか。色気がないとかいうツッコミはなしだ。

ただ、桜井はそうは思わなかったらしい。

「ちょ、めくれてますよ!」

慌てたような口調で桜井はそう叫んだ。その両頬は真っ赤に染まっている。え、なんで。

「…いや、がっつり体操服のズボン履いてるし。」

ほら、とスカートを軽くまくって見せたら桜井はうわっと手で顔を覆った。女子か。
しばらくして、桜井は手をそろそろとどけて隙間から私の方を伺ってきた。少し悪戯心が湧いて、下ろしていたスカートを少しまくれば桜井は再びぴゃっと顔を隠す。…可愛い。

「そんな照れるほどじゃないでしょ。」

「でも…隠れてるものが見えるとドキドキしちゃいますから。」

「桜井さてはムッツリだな〜。」

ニヤニヤしながら肘でうりうりとつつく真似をする。楽しい。
やっぱり桜井はこのちょっと可愛くていじられる感じが似合ってる。

「まあ…。」

「え、」

違いますよ! というような返事を期待していたのだが、何故か桜井は肯定するように頷いた。…え? ほんとに? 待って、意外すぎない??

「桜井ムッツリなの? まさかの?」

「…あなたにだけですけどね。」

「………え?」

「だって好きなんですもん。」

顔を真っ赤にしていうその台詞の破壊力は抜群で。私にだけとか、なに、なにそれ。思わず私の顔も真っ赤になって、私は両手で頬を抑えた。

なに、反則でしょ。


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