そんな目でみるな


桜井について話してみようと思う。

出会いは春。同じクラスで、最初に席が近くなったのが仲良くなったきっかけだった。初対面での印象は、なんか可愛らしい子だなというものだった。

席が近いのもあり、桜井とはよく喋った。桜井はおどおどしていて男なのになんだか可愛くて、あと面白かった。そんな桜井と話すのが楽しくて私はよく桜井にちょっかいをだしていた。
1ヶ月もたたないうちに、桜井は私にとって一番の男友達になった。

何の偶然か、6月のはじめに行われた2回目の席替えでも私と桜井の席は近くなった。「またですね。」と笑いながら言う桜井に、よろしくと言いながらデコピンしたのは記憶に新しい。あの後桜井がちょっと拗ねてて可愛かった。お詫び代わりに飴玉あげたら嬉しそうにしていてそれもまた可愛かった。

このあたりからクラスの子に、付き合ってるの?と聞かれることが多くなった。まあそうだろう、休み時間とかずっと喋ってるし、私から桜井を撫でたり小突いたりすることもあったし。要するに私たちの距離はかなり近かった。

でも、付き合うとかは考えたことがない。
桜井のことは友達としてはもちろん好きだ、でも弱気な奴は好みじゃない。付き合うとかはなしだ。まあそれは桜井も同じだろう。

何度もいうが、桜井のことは友達としてすごく好きなのだ。だってなんか小動物みたいで可愛いし、話していて面白いし、気を使わなくていいから楽だし。
あと意外なことにバスケ部で1年ながらスタメンをはっているらしい。まあ私桜井がバスケしてるとこ見たことないんだけど、てか想像できないし。料理してる姿は秒でイメージできるんだけどなあ…って話がそれた。

そう、とにかく私にとって桜井はとても良い友人なのだ。

で、なんで急に桜井について話しているかというと


「僕…名字さんのこと好きなんです。」

今現在進行形で、その桜井に告白されているからだ。

放課後、委員会を終えさあ帰るかと思っていたら、桜井から教室に来てくださいとメールが届いていた。今部活終わったのかな〜何の用事かな〜と思いつつも教室に行けばこれだ、突然の告白イベント。

目の前にいる桜井は顔を真っ赤にして、私のカーディガンのすそをつまんでいる。女子か。可愛すぎか。
それにしてもまさか桜井に告白されるなんて、これは夢か。

「え、えっと…あの…、…桜井?」

とにかくなにか言わないと、と思ったけど上手く言葉が紡げない。
若干うつむき加減の髪の隙間から見える耳は本当に真っ赤に染まっていて。つられて私まで少し赤くなってしまう。なにこれ。なんだこれ。

気持ちは、嬉しかった。でも、桜井は友達だ。付き合うとかそういう相手としては見れない。

だから、断ろうとした。のだけど。

「あの!」

そう言って桜井は突然顔を上げた。かと思うと、ぎゅっと唇をかんで私の目を力強く見つめてくる。いきなり視線がかちあったものだから思わず肩が跳ねた。え、な、なに、

「…返事は、来週でいいです。それまでに好きになってもらうんで。」

「…え?」

桜井らしからぬ、少し強気な物言いに思わず目が点になった。

「僕、本当に名字さんのことが好きなんです。だから、」

その目があまりにも真剣で、思わず心臓が痛くなった。ぐっと引き締められた口元は強い意志そのものを表していて。なんなの、桜井なのに、なに、


「諦めませんから。」


思わずキュンとしたとか、そんなの、嘘だ。


戻る
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -