魔法の使えぬランプは不要


海常高校男子バスケットボール部のマネージャーになってはや5ヶ月。
インターハイは惜しくも負けてしまったけど、4月に比べてチームはかなりまとまってきた。
私自身もマネージャー業に慣れてきたし、最初は一切話が出来なかった笠松先輩とも最近やっと最低限の会話が出来るようになった。
だけど、私にはバスケ部に関して1つ悩みがある。

「なにボーッと突っ立ってんの。邪魔なんだけど。」

そう、黄瀬の存在だ。

黄瀬は、顔がいいので女子にモテる。そしてモデル業のせいかもしれないけど、基本的に女子への対応はかなりいい。…私以外には。

なぜか黄瀬は、私にだけあたりが強いのだ。

選手とマネージャーという関係だし黄瀬とは仲良くしたいのだが、相手が喧嘩腰でこられるとどうしても喧嘩腰で返してしまうのだ。辛い、ってかめんどくさい。
いっそのこと、絡まずに最低限の会話だけで済ませたいのに、いつも黄瀬から絡んでくるからどうにもならない。ぶっちゃけ絡んでくるのやめてほしいと思う。
それにしても、お互い嫌な気持ちになるだけなのにどうして黄瀬はわざわざ私に絡んでくるんだろう。

「聞いてんすか? 早くどけって。」

むっとして何か言い返してやろうと思ったが、大人しく去ることにした。黄瀬の言い方はともかく私が通路にいたのは事実だし。

ただ黄瀬は、黙って通り過ぎるということができなかった。

「言われなきゃどけないとか、ほんと迷惑すぎでしょ。」

こうやって必ず余計な一言を放ってくる。

「なにその言い方。」

「事実じゃん。」

しらっとした顔で黄瀬は言ってくる。…正直うざい。




「名字いちいちこっち見ないでくれる? うざいんすけど。」

「は? 見てないから。」

今日も今日とて黄瀬に絡まれる。だが今日はいつもとは違った。
具体的にいえば、私の機嫌が普段よりも悪かったのだ。

「てかさあ、黄瀬。」

苛々とした気分のまま黄瀬の言葉に応える。それに対して黄瀬は、なんすかと少し眉をひそめて言った。

「なんでいちいち話しかけてくんの?」

ついに、聞いてやった。
これを聞くともう仲良くなることは出来ないかもしれないと思って言わずにいたのだが、もう我慢出来なかった。
黄瀬は私の言葉をうけて、もごもごと口を動かしている。

「…いや、その、」

「私のこと嫌いなんでしょ。」

いったい何をためらってんだ。ほら、言え。私のことが嫌いってはっきり言え。ズバッと言ってくれた方が、私だってすっきりする。そう思ったのだが、

「なっ、 ちげーよ!」

「何が違うの!」

慌てた調子でいう黄瀬に対して思わず頭にカッと血が上る。
何が違うんだ、あんな態度とっておいて、今更何が違うと言うの!


「好きじゃなかったらわざわざ話しかけねーよ!」


その言葉を聞いた瞬間、時が止まったように感じた。思わず体が固まる。

「……は?」

その言葉を理解するのに、数秒を要した。頭の中ははてなマークでいっぱいだ。
ん? …すき、って、え、すき? とは? え? なに、…?

「いや、あの、…黄瀬?」

私の声を聞いて、同じく固まっていた黄瀬がハッとなった。かと思うと、いきなり私の顔面を手で鷲掴みにしてくる。

「ぶっ!」

「忘れろ!」

その乱暴な行動に、なにすんの!と怒鳴りつけようと思ったけど、指の隙間から見えた黄瀬の顔が真っ赤で思わず何も言えなくなった。

なに、なんなのこいつ。


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書いていて思ったのは素直じゃない黄瀬とか可愛すぎるということです。でもその可愛さをうまく表現出来なくてもどかしい。誰か、誰か、素直じゃない黄瀬を私にください。素敵なリクエストというか私に新たな扉を開かせるきっかけをくださった松村様、ありがとうございます〜!


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