おまけ


付き合ってはや1ヶ月。最近困っていることがある。

「おい。」

「…。」

「手はなせって。」

「…っむ、り!」

私のその言葉を聞いて宮地くんはまゆをひそめた。そんな宮地くんを見ないよう、私は顔の前に手で作ったガードをより強くする。全ては宮地くんから唇を守るためなのだ。

最近困っていることというのはそう、宮地くんがやたらキスしようとしてくることだ。

ちなみにまだキスはされていない。なんとか頑張って守ってきた。だいぶ強くなった私。
ここは放課後の教室。今日は宮地くんが日直でお前も手伝えとおどさ…お願いされた。そしたら何故かキスをされそうな状況に陥ったわけだ。何故だ、何故こうなった。

そもそも教室はキスなんてしていい場所じゃない。
そんな手繋いだり抱きしめられたりするだけでも心臓がおかしくなりそうなのに、キスなんてされたら死んでしまう。断固阻止だ。どれだけ怖い顔をされようと阻止するしかない。

幸いにも宮地くんは優しいので、顔の前の手のガードをこじ開けてまでキスしようとはしてこなかった。待ってくれてるんだろうなということはなんとなくわかっている。…申し訳ない気持ちでいっぱいだ。ごめんね宮地くんでもあと5年ぐらい待ってほしい。ちょっと心の整理があれなの。

というわけで今まで無理強いされたことはなかったのだが、何故か今回は違った。

チッとひとつ舌打ちが聞こえて宮地くんが離れていく。諦めてくれたかな?と思い、手の隙間からそろそろと宮地くんの顔を見ようとした、その時。

「う、っわ…!」

思いっきり腕を引っ張られた。そのままの勢いで宮地くんの胸にダイブする。目の前は黒一色になりかすかな洗剤の匂いが鼻をついた。

「ご、ごめん!」

急いで離れようとしたが、宮地くんの腕が腰に回されてそれはかなわなかった。慌てて顔を上げるが、ぐっと強く引き寄せられて再び宮地くんの胸に顔が沈められる。……え?

ものすごく嫌な予感がする。咄嗟に手で顔をガードしようとしたのだが

「……名前、」

耳元で小さく名前を呼ばれて思わず力が抜ける。だ、駄目だ、卑怯だ、耳元でその低音は卑怯だ。

宮地くんは腰に回している腕の力を少し弱めると、私の頬に手を添えた。そのせいで自然と上を向く姿勢になる。ま、守らなきゃと何処か頭の片隅で思ったが宮地くんがあまりにも真剣な目で見てきてうまく手に力が入らなかった。

頬に添えられた手の親指で目の下をつつっと軽くなぞられる。肩が一瞬震えてつい反射的に目を閉じてしまった。すると唇になにか柔らかい感触。

「なっ…!」

「もーらい。」

思わず目をひらけば口角を上げる宮地くんが至近距離に見えた。そのままペロリと舌で自分の唇を舐めていて、その仕草に思わず顔が熱くなる。

駄目だ、宮地くんはやっぱりいろいろ心臓に悪い。


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