私には霊感がある。霊感のあるというより、霊が異常にはっきり見える。 親や祖父母が寺関係の人間とかいうわけではなく、何故か昔から私にだけ霊感があった。 霊感のある人は悪霊を退治することが出来るという話がよくあるが、私から言わせてもらうとあんなのは嘘だ。霊感があっても悪霊なんて倒せないし、むしろ霊ホイホイなので良い霊にだってちょっかいをかけられる。歩いてたら足を引っ張られて転ばされたり背中を押されて壁に顔からぶつかったりと散々だ。 そのせいで私は、知り合いのあいだではすっかりどんくさいキャラとして通っている。不本意すぎる。 何年もそんな目にあってきたのだが、ついこの間とあることに気づいた。それは霊の存在に気づかないフリをすると、なにもちょっかいをかけられないということだ。 どうやら霊たちは霊感のある人間を見分けることが出来ないらしく、見えない人間としてふるまっていればなにもされないのだ。このことに気づいた時はもう喜びのあまりどうにかなりそうだった。 見えてるものを見えないものとして扱うのは結構苦労するけども、それでも悪戯をされないというのはだいぶと楽だった。これで私も普通の人と同じように行動できる。 そう思っていたのだが、 「(なんだあれ…!)」 おかしい、あれはおかしい。 私は今学校に行く道を普通に歩いていた。つまりここはただの通学路だ。 なのにそこにはとんでもなく神々しい人がたたずんでいた。それはもう発光してるんじゃないかと思うぐらいに神々しい。赤い髪に左右で色の違う目、そしてなによりも顔がやばい。そこらの芸能人の比じゃない。超絶美人。 その人は、道の端にある塀に腰をかけていて空を見上げていた。服装は現代のものじゃない。後ろにはえる立派な尾に、赤い髪の隙間からのぞく動物の耳……多分妖狐だ。うわ、初めて見た。 思わずガン見しかけるか、なんとかこらえる。駄目だ、なんでところにいるのかはわからないけど、あれに絡まれたら絶対にろくなことにならない。ここはあくまでも気づかないふりだ。無視だ無視……… 「っ?!」 そう思った瞬間、思いっきり目が合った。とっさに勢いよく顔を背けてしまう。しまったやばいばれた。 思わず足が動き出す。早く、早く逃げよう。それにしてもやらかした、あんな勢いよく顔を背けるべきじゃなかった。見えているのがバレバレじゃないか。目が合っても気にせず見えていないふりをすればよかった。 でもどれだけ後悔しても後の祭りだ。今はもう、とにかくあれから逃げないと。 それからしばらく全力ダッシュをしたが、体力がもたずすぐに足がとまった。膝に手をつき肩で息をする。だ、駄目だ肺が痛い。体力がなさすぎる。 でも結構距離は取れたはずだ。うん、大丈夫なはず。 「やあ。」 「ひっ?!」 そう思った瞬間、後ろから声をかけられた。振り向くとそこには例の赤髪がいる。は、なんで?! 「あんなふうに逃げられたのは初めてだよ」 「す、いません…。」 「傷ついた。」 全然傷ついた顔してないんだけどこの人……! 色の違う目は興味深々というようにキラキラ輝いていた。な、なぜ。 「僕が見えるんだね。」 「は、はい。」 「しかも会話までできる。」 「そう、ですね…。」 「なのに体調に変化はない。」 「?」 「普通は生気を吸われてすぐに死ぬんだよ。」 「え?!」 し、死ぬ?!えっ…ちょ、えっ?! この人なに、えっ、あ、悪霊かなにか?! 「それにしても、」 「?」 「やっぱり珍しいね。」 「なにが、ですか…?」 「生気の強さというのかな。ここまで強い人間はめったにいない。」 「あ、ありがとうございます?」 「うん、興味がわいた。」 「へ?」 にやり、と目の前の人の口が弧をえがいた。あっやばいやばいやばい絶対これやばい。駄目だ無理だ確実にろくなことにならないやばい逃げ 「連れていこう。」 その言葉を聞いた瞬間、体に浮遊感を感じた。すぐに横抱きにされたのだと気づく。 「え、……は?!」 「ああ、そういえば名乗っていなかったね。」 「いや、あの、」 「僕は赤司征十郎。」 「そういうことじゃなくて、」 「君は?」 赤と黄の目でじっと見つめられぐっと息が詰まる。 「…………名字名前です。」 拒否権なんてはなからなかった。ああ、一体これからどうなってしまうんだろう。 ------------ 妖狐赤司ってやばいですね。もはや文字列が神々しい。もし続きを書くならなんやかんやあって夢主を嫁にしたくなった赤司と日常に戻りたいと主張しまくる少し度胸のついた夢主のほぼ痴話喧嘩みたいな話を書いてみたいです。リクエストくださった祇妓様、素敵なリクエストありがとうございました!! ← → 戻る |