美女の野獣


中3の春、突然灰崎に告白された。あまりにも驚きまくった私は、上手く回らない頭でその申し出を了承したのだった。

あれから1年。私は祥吾に引きずられるような形で静岡の高校に通っている。半強制的に進路を決められたわけだがまあそれは別に構わない。
だが1つ。大きな問題があった。それは、祥吾が空き教室とか部室とかですぐに盛ってくることだ。しかもほぼ毎日。
一番最近だと昨日、練習中に祥吾に呼び出されてついて行ったら、そのまま部室で襲われそうになった。てめえ部活中になにしてんだ殺すぞ。
中3の時は「今私にそんなことして落ちたらどうすんだ同じ高校行けねえぞ」という脅しを何度もしたおかげで何も無かったのだが、高校に入学してからはことあるごとに襲おうとしてくる。

でもまあ、そういう時の対策はちゃんと把握出来ている。それは、覆いかぶさられた瞬間、奴の顔を思いっきり殴ることだ。
昨日の部室の時も、渾身の右ストレートを叩き込んでやった。すると短気なこいつはすぐに殴り返してきてそれに私も反撃して、あっという間に喧嘩になった。

そんなやりとりがほぼ毎日あるせいで、まだ高校に入学して1ヶ月しか経っていないのに、私たちには生傷が耐えなかった。影では喧嘩っプルとか呼ばれているらしい。不本意。
ただ、私と喧嘩して発散されているらしく、祥吾は高校に入ってからまだ1度も喧嘩をしていないそうだ。まあ、あの人のいいキャプテンの負担を少しでも減らせているようでよかった。


今は昼休み。私は昨日負った怪我の包帯変えるために、保健室へと向かっていた。何故か祥吾もついてきている。なんで着いてくるの、と言おうとしたけど、祥吾がなにかを考えているような顔をしてるのでやめた。こいつが考え事するなんて珍しいな。
ちなみに私たちは、相手に負わせた怪我について謝らないと決めている。お互い様だし、ていうかいちいち謝っていたら本当にキリがない。

保健室についたが、入口の扉には出張に行っていますと書かれた紙が貼られていた。鍵は開いていたのでそのまま開けて入ると、中には誰もいなかった。まあ包帯をかえるだけだし、先生がいなくても大丈夫だろう。

「祥吾、あんたも包帯かえる?」

「いらね。」

「あっそ。」

適当に会話をしつつ、包帯をかえ終えた。さあ出るかと思ったら、突然祥吾に腕つかまれる。
は?と思ったら、そのまま引っ張られて結構な勢いでベットに放り込まれた。ギシ、と派手な音を立ててベットが軋む。

「いっ……!」

背中ぶつけた!なにすんだこの野郎ぶっ殺すぞ!と思って祥吾を睨むと、奴は後ろ手に扉の鍵を締め、そのままこっちへ来て覆いかぶさってきた。

…お前、さっきまで何か考えてるなとは思ってたけど、結局これかよ!

今治療したばっかりなのになと思いつつも、いつものように右ストレートを叩き込もうとした。が、

「もうそれは読めてんだよ。」

と右手を強めに押さえ込まれてしまった。祥吾の口が弧を描いていてかなりいらっとする。殴れないのなら蹴るだけだと思った瞬間、乱暴に唇を重ねられた。え、ちょ!

「ふっ、……んん!」

こ、これは、け、蹴るしかない…!と思ったが、ぬるりと舌が侵入してきて一瞬思考が止まった。反射的にぎゅっと目を閉じる。

入ってきた祥吾の舌がツゥと口の上の部分をなぞり、思わず背中がはねた。ぞくっと何かが背中を走る。
唇の角度を何度もかえて長いこと口内を舐められたり舌を吸われたりして、私は酸欠になりかけていた。だ、だめ、頭がくらくらする。ほんと、待って、待って。ぐぐっと上手く力の入らない体で身じろぎをした瞬間、唇が離された。

「…っ!」

目を開けると、私と祥吾の間に唾液の糸が繋がっているのが見えて、思わず顔が真っ赤になる。

「…名前。」

私の名前を呼ぶ祥吾の目は獣のようにぎらついていて、あ、これ駄目だ。喰われる、と本能的にそう思った。



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灰崎って案外二股とか浮気とかしなさそうなイメージがあります。付き合ってから別れるまでが速すぎるだけで、自分が誰かと付き合ってる間は他の女には手は出さない的な。ただし自分がフリーなら他の男の女はすぐ奪いますけどね!灰崎のそういうとこ!ほんと好き!リクエストくださった遥様、本当にありがとうございました!


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