※オリキャラ(幼なじみ)が出てきます 今日はお盆前最後の練習、ということで昼前に練習が終わった。明日からは3日間練習が休みだ。 ミーティングも終わり、みんな着替えをするべく部室へと向かう。私も着替えるかーと思ったその時。 「名前ー!!」 突然体育館の扉が開いて、私の名前が呼ばれた。みんなの視線がいっせいに扉へと向く。そこにいたのは、 「あ、しゅんくん!」 ニコニコと爽やかな笑顔で手を振っている男の子。それは、私の幼なじみであるしゅんくんだった。 私には赤ん坊からの仲の幼なじみがいる。小6で家を引っ越すまで、ずっと家が隣でしかも年が同じ。仲良くなる条件は揃っていたわけで。そんなしゅんくんと私はずっと一緒に過ごしてきた。 元々家族ぐるみで付き合ってたのもあり、引っ越してからもしゅんくん家族との交流は続いていた。長期休暇の度に一緒に旅行に行っている。 今年の夏も、1泊2日で温泉旅行に行くことになっていた。ちなみに、朝早く着くために、今日の夕方に出発する予定だ。帰ったらすぐ準備しないと。 「どうしたのー?」 バタバタと走って近づくとしゅんくんの笑みは更に爽やかになった。 「名前のこと迎えに来た!」 なんと、わざわざ迎えに来てくれたのか。しゅんくん家から秀徳まで遠いのになあ。 「ありがと。てかしゅんくん部活はなかったの?」 ちなみにしゅんくんは小学校からサッカーをしていて、高校でもサッカー部に入っている。 なかなかの強豪らしく、ほとんど休みがないって聞いたんだけど。 「俺んとこ今日から休みなんだ。」 「へえ。」 「名前もう帰れる?」 「着替えたらいけるよ。」 「じゃあ待っとく!」 「なにあれ。」 俺は少し離れたところから、名字ちゃんと名字ちゃんの幼なじみ(らしい)男とのやり取りを見ていた。昨日、名字ちゃんから幼なじみ家族と旅行に行くという話は聞いていた。 でも、わざわざ迎えに来るとか、ていうか、もしかしなくてもあの幼なじみの態度から察するに、 「すげえ名字ちゃんのこと好きじゃん……。」 俺の独り言に、隣に立っている真ちゃんがぴくりと反応した。 うん、あれはあの幼なじみ、確実に名字ちゃんのこと好きだわ。恋愛的な意味で。名字ちゃん本人は気づいてないっぽいけど見てたらわかる。好きって気持ちがビシビシ伝わってくるし。 「真ちゃんって、あの幼なじみのこと知ってんの?」 「……直接の面識はない、だが名字から話は何度も聞いているのだよ。」 そう言って真ちゃんは眼鏡をカチャリとあげた。う、うわー、真ちゃんめっちゃ苛立ってるよ。オーラってか殺気がやべえよ。多分嫉妬してんだろうけど、気づいてあげて名字ちゃん。すげえ不機嫌だから。 名字ちゃんと幼なじみの方を見ると、相変わらず笑顔で楽しそうに話していた。同じくその光景を見ている真ちゃんはチッと1つ舌打ちをする。 そして真ちゃんは、練習の影響で未だに額を伝う汗を、シャツの胸の部分で拭った。勢いよく拭ったもんだから真ちゃんのお腹が思いっきり見える。 その瞬間、名字ちゃんの首がぐるん!とこっちへ向けられて「腹筋だ!真ちゃんの腹筋!!汗かいた腹筋!!美しすぎ!! 」と叫びながら膝から崩れ落ちた。 ……え、今名字ちゃんから見てこっちって完全に死角だったよね。なんで真ちゃんのお腹見えてるってわかったの。なにあの子、鷹の目持ってたっけ。俺のアイデンティティ。 床の上で悶える名字ちゃんの隣では、例の幼なじみくんがこっちを嫉妬した顔で見ていた。 「……真ちゃんさあ。」 「なんだ。」 「普段、そんな拭き方しねえじゃん。」 こいつは潔癖だ。汗は必ず用意したタオルで拭く。絶対にシャツの裾で拭いたりしない。こんな風に腹が見えるように拭くなんて、なおさらありえないことだ。 だってお前、いつも俺がその拭き方したら「だらしないのだよ」つって怒んじゃん。 「わざとっしょ。」 「そんなわけないだろう。」 俺が疑うような目でそう言えば否定の言葉が返ってきたが、そういう割には真ちゃんは満足そうな顔をしていた。あっこれは確信犯だわ。 だってお前さっきまで不機嫌だっただろ。なんでそんな急に機嫌良くなってんだよ。 名字ちゃんも難儀な奴に惚れてるなあ、と俺は改めて思った。 ---------- 幼なじみの名前は最後の最後まで悩んだんですけど結局いい名前が思いつかなかったので私のガチ幼なじみと同じ名前にしました。いえーいしゅんくん見てるぅ?(見てない) 嫉妬というよりこいつ俺のこと好きだから!俺しか見てねえから!アピールをする緑間になりましたね。負けず嫌いな緑間が好きです。素敵なリクエストくださった梓さん、本当にありがとうございました! ← → 戻る |