うつくしく綻んだ


今日は図書委員の仕事が少し早く終わった。
なんとなく窓から体育館の方を見れば、微かにボールの弾む音が聞こえる。そうか、バスケ部はまだ練習中か。

……そういえば、宮地くんのバスケしてる姿は見たことがない。
ちょっとだけ、ちょっとだけ見に行ってみようかな。そして一瞬だけ宮地くん見たら、バレる前にすぐ帰ろう。
もし他に体育館に人がいたら、うわっあいつなんで見に来てんのとか思われそうだし、いつも宮地くん最後まで1人で居残り練習してるって言ってたし、ちょっと待ってから行こう。…このビビリ思考どうにかならないかな。

図書室で時間を潰すこと数十分。すっかり下校の時間になった。図書室の鍵をしめて静かに体育館へと向かう。体育館の扉は開いていて、そこからこっそり中を覗いてみる。

いた。

誰がって、宮地くんが。体育館に他に人はいなかった。1人で居残り練習をしてるというのは本当みたいだ。
宮地くんは私に気づくことなく、淡々と練習を進めていた。置いてあるコーンの間をジグザクにドリブルして、そこからシュート。宮地くんの投げたボールは綺麗にネットをくぐった。

かっこいい。

ゴールが決まって汗を拭う宮地くんはキラキラと輝いてみえた。かっこいい、本当にかっこいい。何故か背中を見ているだけなのにドキドキする。これだからイケメンはずるい。

そんなことを考えていたら、宮地くんがこっちを振りむいた。私が宮地くんをじっと見ていたのもあり、バッチリと目が合う。あっ、気づかれた。
私に気づいた宮地くんは少し驚いた顔をして、こっちへと歩いてくる。ちょいちょいと手招きをされたので、靴を脱いで私も体育館へと入った。

「…なに、見に来たの。」

「う、うん、急にごめんね。」

「別にいいけど。……で、どーだったよ。」

私の目の前まできた宮地くんはそう言って笑った。
素直に、かっこよかったよ、と言おうとしたけど汗をかいている宮地くんがやけに色っぽくて、つい言葉に詰まってしまう。………ていうか、あれ? な、なんか距離近くないですか…?

「え、っと…。」

「はっきり言えって。」

宮地くんがさらにぐっと近づいてきたから思わず後ずさる。背中が後ろの壁にあたった。
それにも関わらず宮地くんはどんどん私との距離を縮めてくる。1歩、また1歩と近づいてきて、

「み、宮地くん…?」

「…なあ。」

「ひ、」

そのまま宮地くんは壁に手をついた。えっ、ちょっ。
…目の前には宮地くん、横には宮地くんの手、後ろには壁とついに逃げ道がなくなった。てか、え、 こ、こ、れはもしかしなくても、か、壁ドン?!

「それともなに、」

そのまま顔を近づけられて、宮地くんの口が私の耳の近くに来るような体勢になる。吐息が微かに耳にかかって、背筋が震えた。


「見惚れたとか?」


そう言って笑う顔が、声が、雰囲気が、なにもかもが色っぽすぎて、う、わあ、あああ、……!


「…って、ちょ、おい!大丈夫か!」

「…………だ、大丈夫じゃない、です。」

おもわず腰が抜けてしまった。
慌てて宮地くんが抱き寄せてくれたけど……だからこの近さが駄目なんだって!!


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