物語るのは何か


「あ!さっきの着ぐるみだ!」

「…写真撮ってやろっか?」

「え、ほんと?!」

「おう、携帯貸してみ。」

「てか、高尾も一緒にうつろーよ!」

「…! お、おう。」

「あ、すいませーん!ちょっとシャッター押してもらってもいいですか?」

「いいですよ。…じゃあいきますね、はい、チーズ。」

カシャ

「……、ありがとうございます!」

「あざっす。」

「どういたしまして。仲良さそうですね、お二人はカップルですか?」

「「え。」」





「でさあ、その時緑間が…、」

「…てか、名字って緑間のことばっか話すよな。」

「だって絶対緑間自分の話しなさそうじゃん。中学の時の緑間の話とか知りたくない?」

「いや、知りたいけど…。でも、緑間の話はやめね?」

「ん? なに、喧嘩したの?」

「そーいうわけじゃないけど。」

「青峰が緑間の眉毛全剃りした話とかあるけど。」

「何それ聞きてえ。」





「なんかぐるぐるする。」

「…わりい。」

「高尾がコーヒーカップではしゃぎすぎるから…。」

「すげえ楽しかった。」

「バカ。」

「ごめん。」

「すごい酔った。」

「…。」

「すごい気持ちわるい。」

「…。」

「ねえ。」

「…。」

「…。」

「………なんか食べるか? かき氷とか。」

「やった高尾奢ってくれるのありがとう!」

「お前待ってたな?!」

「まさか。」





「いやー、楽しかったねえ。」

「…そだな。」

今は夕方。太陽は沈みかけていて、空はオレンジに染まっていた。
人も少し減ってきた。私たちはさっき買ったかき氷を食べながら、遊園地内にある広場のベンチに座って休憩をしていた。

高尾は黙って空を見あげながら、なにかを考えているようだった。どうしたんだろう。私はそんな高尾を横目に見ながらかき氷を口に運ぶ。冷たい、美味しい。

「食べないと溶けるよ、かき氷。」

「…ああ。」

高尾は相変わらず、どこか上の空だった。

「どうしたの。」

「…なにが。」

「なんかボーっとしてる。」

「…………、あのさ。」

そう言って高尾は空に向けていた視線を私へと向けてきた。綺麗なオレンジの目が、私を見る。


「…俺、お前のこと、ずっと避けてたじゃん。」


触れないようにしてきた話題が高尾の口から出てきて、少しドキリとした。
二人の間を、風が吹きぬけた。


戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -