千尋は酔うと手がつけられなくなる。 「おかえり。」 「…ただいま。」 今日は学科で飲み会があったらしく、千尋は夜遅くに帰ってきた。 扉の開く音が聞こえたので眠い目をこすって玄関まで出迎えに行けば、そこには顔を真っ赤にした千尋がいた。近寄ってみればお酒のにおいがする。こりゃまた随分飲んできたようだ。 「とりあえずシャワーだけ浴びる?」 「………名前。」 「ん、なに?って、…わ!」 名前を呼ばれたので返事をすれば、そのまま抱き寄せられた。え、なに、と思う間もなく千尋の手が私のTシャツの中に突っ込まれる。 焦りながらも、中で怪しく動こうとするその手を私は掴んでとめた。 「…なんだよ。」 「なんだよじゃないでしょこの酔っぱらいめ。」 「…明日休みだろ。」 「ここ玄関!」 「大丈夫だ。」 「なにが!」 抱き寄せられた体をぐっと引きはがして、千尋の顔を見る。いつも通りの無表情だが、目の奥は静かに燃えていた。 …あ、これやばいやつだ。 「大丈夫だ、優しくする。」 その言葉に反論しようとしたが、大きな手のひらで後頭部を掴まれそのまま口を塞がれる。 …酔った千尋は本当に手がつけられない。酸欠でクラクラする頭で、私はそう思った。 ← → 戻る |