I bite you to death! | ナノ

表紙へ戻る


これが分かれ目、束の間の別れを


鈍い音。
肉が抉れる感触と共に、意図も容易く目の前の男子生徒は吹っ飛んでいった。

「…弱いね」

これでは面白くない。
ちっ、と小さく舌を鳴らし、
舌打ちをするなんて、まるで宮野雛香のようだ、と思った。



宮野雛香。




奇妙だ、と思う。
一見それなりの容姿をした彼はけっこう小柄な上に細身で、しかし武器を交えればかなりの腕を発揮する。
言葉遣いは荒く内面は冷たい。
その愛想の無さも雲雀が気に入る1つの要因であったが、
そのわりにあの双子の弟だとかいう宮野雛乃には異常なほどに執着する。
屋上で闘り合っていても、雛乃がやってくると平気で中断するほどだ。


わからない。
強くて読めない割に、
時たまどこか危ういほどに脆く見える。
わからない。
だからこそ、興味をひかれるのかもしれないけれど、

「…風紀委員長ー」


はっと顔を上げる。
いつの間にか、こちらへ歩みを進めてきていた雛香と目が合った。
「何ぼーっとしてんの、お前」
そんなんじゃやられちゃうよ?
そう言って笑うと、雛香はこちらの惨状を見回し、あー、と頬を引き攣らせた。
「…ごめん、さっきの撤回」
「当然。咬み殺すよ?」
「この死体の群れに俺を追加しようとすんな……」

げんなりとした顔の雛香に、
殺してないよ、ちゃんと救急車に乗せてもらえる程度に止めてるから、
と返すと、いっそう雛香の顔が暗くなった。


「…まぁもういいや。ところで俺、あっちの方見てきていい?」
「いいよ。僕はこっちへ行く」
「んー。じゃ、主犯見つけたらケータイに連絡入れて」
「気が向いたらね」
「…まー、どーせお前が瞬殺するだろうけどな」
そこでふと、という感じで雛香がこちらを見た。
「…そういえば、俺の携帯番号知らないよな」
「知ってるよ」
「…え、なんで?」
「僕は並盛のことならなんでも知ってるって言ったよね?」
「……あー、うん、そうでしたね」
雛香の口元が若干引き攣った。



じゃあ、よろしく。
ひらり、1度だけ手を振った雛香の姿が、
角を曲がって消えていった。

[ 23/64 ]
[] []

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -