I bite you to death! | ナノ

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手当をしましょう、危険な気はしますが


「ていうか腕ほっそ」
お前ちゃんと食べてんの?
と何やらすごく余計な事を言っている雛香の横顔を眺め、雲雀は息を吐く。
「…別に、自分で出来るんだけど」
「そりゃそうだろうな」
うん、と大きく縦に頷く雛香に、危うくトンファーを投げそうになった。
「…じゃあ放してくれる?」
「それは嫌だ」
ぴき、と雲雀のこめかみに浮かび上がった血管に気付いた訳ではないだろうが、雛香は言葉を重ねた。
「この前、とある奴に手当してもらったんだけど、それが案外悪くなかったから」
「…へえ。悪くなかったんだ」
「そーそー、こういうことできるから」
次の瞬間、
ばしゃっ、
と、
「…っ!」
「おお」
なぜか真面目な顔つきでこちらを見返す雛香。
腕に勢い良く掛けられたのは消毒液。
委員長サンって悲鳴とかあげないの?
とどこまでも余計な事を述べるその真顔に、
「…君、本当に咬み殺されたいんだね?」
きゅ、と雲雀は拳を握り締めた。
「ざんねん」
だが溢れ出る雲雀の殺意に怯む様子も無く、雛香はにやりとまた不敵に口角を上げた。

「お前の愛武器は、あっち」

あっち、と指差す方向を見れば、なるほど遥か彼方に1対のトンファーが放られている。
いつの間に。
「さすがのお前も、これじゃ手は出せねーだろ」
くっくっ、と可笑しそうに喉で笑う雛香を見つめ、
珍しく機嫌が良いな、と全くこの場にそぐわない感想がちらりと頭を掠めていった。


「…で、残念だけど」
雛香がきっちり包帯を巻いた腕の調子を確かめ、
雲雀はお返しとばかりに不敵に笑った。
「…誰が、トンファーが無いと手が出せないなんて、言った?」


げ、と。
雛香の顔が引き攣った。


「…ちょっとストップ風紀委員長。俺丸腰の相手とナイフで闘り合う趣味無いし」
「そう、じゃあ作れば?」
「いやほんとに何言ってんだかてめ、わっ、」
何を焦っているのか、いつもは欠片も隙の無い雛香が後ずさった瞬間につまづいた。
そのまま、後ろにぐらりと傾く。
とっさにその手首を掴めば、
先ほど雛香に傷を付けられた上腕が鈍く痛んだ。


「…馬鹿だね」


別にトンファーじゃなくても、
相手を追い詰める方法なんていくらでもある。


眼前に近付いた黒い瞳を覗き込み、
珍しくひどく狼狽えているその表情を眺めて、
ふっと雲雀は笑みを浮かべた。


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