I bite you to death! | ナノ

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暴君とひとときの休息を


「…最近、ここら物騒だけど」
大方、ここ何日か並盛の生徒が襲われている事を指しているのだろう。
「…知ってるよ。それが何」
「いや、」


ニヤリ、
不意の不敵な笑みに、
嫌な予感。


「並盛を守る風紀委員長様は、何してんのかなって」


途端、
キンッと跳ね返されるトンファー。


苛付きと高揚が、
同時に込み上げるのを感じた。


妙な感覚だ。


「何、よっぽど咬み殺されたいの?」
「出来るもんなら」


珍しく挑発的な物言いに、殺意よりも驚きが芽生えた。
軽く目を見張り、後方へ距離を取った相手を見やる。
「…どうしたの。随分と荒ぶってるね」
「…ちょっと前、身体の調子が鈍ってね」


隙なく構えられるナイフ。
目を刺すように光る銀色は、
どこかこの少年に似ていると思う。


「…やっぱ、生ぬるいのに浸かりすぎると良くないみたいだな、って」
「意味がわからないよ」

別段わかってやる気もなかったので、雲雀は勢いよく地面を蹴った。


宮野雛香。
弱い草食動物しかいないこの並盛で、
ほぼ唯一といっていいほど自分と肩を並べる、群れない孤高の動物。
面白く、
興味深い。
雛香に対する雲雀の感想は、それに尽きた。


甲高い金属音と共に、
ぶつかり合う凶器達。
そこに、言葉は要らない。
ちらり、横目で窺ったが、弱い小動物達はとっくに避難したらしく、屋上にはどうやら自分たち2人以外誰もいないようだった。
「…何、余裕じゃん」
「…!!」



ヒュン、と振られたナイフが、
肩をえぐった。



ぶしゅ、
と呆気なく溢れ出した赤い血を眺め、
うわ、と雛香が顔をしかめる。
すっと降りた細い両腕から、ナイフがこぼれ落ちた。


「これはやべーな。悪い」
「…何言ってるの?」
ぶん、と遠慮なくトンファーを振るうと、うわあっと雛香が声を上げた。
「何してんだ馬鹿!」
「君こそ馬鹿なの?得物取り落として」
「取り落としてねーよ。いや、ていうかもう終わり。あんたの怪我の手当が先」
「いつもこれくらいで終わらせないじゃない」
「並盛がこの非常事態なのに、唯一の守り手が利き腕ケガしてたら万が一の時どうするんだよ」
ぐい、とトンファーを引っ張られた。
別に抵抗することなんて簡単だったのに、なぜかトンファーはするりと手から滑り落ちてしまった。


…そんな長いセリフ、よく噛まずに言えるね。


どこか場違いな感想が脳裏をかすめていく。
「…ほら、座って」
ぽんぽん、と床を叩く雛香に、
なぜか抗う気が起きなかった。

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