ちかづく心と 「…どーしたんだよ、ったく…」 ベッドで死んだように眠る少年の横顔を眺め、 獄寺隼人はため息を付いた。 帰り道、突然その場に崩れ落ちた宮野をとっさに支えた。 声を掛けても反応が無く、ぐったりとしたその様子は常の宮野にはあり得ないことで、 獄寺ができたことはただ2つ。 シャマルに連絡をとることと、 自分の家で介抱すること。 「…宮野、おい」 たまたま、担任に呼び止められ用事を押し付けられ十代目をお送りし損ねてしまった。 悶々としながらなんとなく1人で教室でぼんやりとしていたらいつの間にか睡魔がやって来て、 目が覚めたらこいつがいた。 午後の授業が始まる前に雲雀に連れて…否、拉致られてから帰ってきていなかったから、おそらく今の今までやり合っていのだろう。 別にそんなことどうでもよかった筈だった。 上履きに染み込む血だって、放っておけばよかったのだ。 なのに、なぜか、 白い上履きに少しずつ浮かび上がるその赤色からどうにも目が離せなくて、 気が付いたらその肩を掴んでいた。 「…で、なんでこーなるんだよ…」 ハァ、と頭を手を当ててもう1つため息。 「オィ、まじ起きろよてめー」 腹立ち紛れにその頬をつねる。 人形じみた青白い肌は妙に冷たく、やたら人間味が感じられなかった。 まじまじと、その顔を観察してみる。 めったに無い機会だった。なんせ顔を合わせれば常に喧嘩をしているような仲なのだから。 閉じられた白い瞼、すっと通った鼻梁、僅かに開いた唇、静かにシーツに広がる黒髪、 どれをとっても美しい、 と、男の獄寺でさえそう思った。 どちらかというとひまわりみたいな明るい弟の方ばかり目立っているが、この少年も十分すぎるくらいに目立つ容姿をしている。 おまけに、リボーンさんに引き入れられてファミリーに入ったこの男は雲雀恭弥と張り合うくらいには腕が立つ、まあそこそこな強さを持つワケで。 そいつが、突然、 「……なんで倒れんだよ…」 悲鳴を上げることもなかった。 前兆などカケラも無かったのだ。 突然、目の焦点が合わなくなって、 その身体から目に見えて力が抜け、 がくん、と膝から落ちていった。 「…なんでもいいけどよ」 こつん、 と、額に額を合わせる。 「…はやく起きろ」 ちっ、と舌打ちをすることなければ毒づくこともないその顔はやたらと生気が無く人形めいていて。 獄寺は訳のわからない不快感が込み上げてくるのを感じながら、 唇を噛み締めた。 「…目ぇ開けろ、アホ雛香」 |