I bite you to death! | ナノ

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後悔は久遠に


どん、
と、衝撃。


……は。


思わずぽかん、と相手を見上げてしまう。
そこで初めて獄寺が自分より随分と背が高いことに気が付いた。うわむかつく。

だがそれよりも、


この体勢はなんだ。



「…嘘付け」

けっ、とそう顔をゆがめる獄寺の両腕は雛香の顔の真横にあり、
互いのシャツのすそが擦れる程度には接近していて、
やたら吐息が唇をくすぐった。


…これはアレか。
いわゆる、
壁ドン、って奴か。


「…どけ」
「うおっ?!」


自分で自分の頭をよぎった考えに吐き気がした。
腹立ち紛れに腕を一閃してやれば、
獄寺は慌てて飛びすさる。
「…何いきなり近付いてんだよ」
「てめぇこそ何いきなり命狙ってんだよ!」
「狙ってねーよ、頸動脈をかっ切ってやろうかと思っただけだ」
「それ命狙ってんじゃねぇかよ!!」


てめ、と口元をゆがませた獄寺が、急に真剣な顔付きになった。
「…宮野」
「…何あらたまって名前呼んでんだよ気持ち悪い」
「…真面目に、聞けよ」


お前、なんでそんなに強いんだ?


ぐらり、
視界が揺れた。


混ざる、
銀色の間から急速に視界を埋め尽くす、


赤と白。





『…さすが、ヴィーラファミリーの次期ボス…』
『…これなら他のファミリーを従えることも…』
『…ああ、不可能ではないかも…』



どれだけ同じことをすればいい。
どれだけ繰り返せばゆるされる?


わかっていたんだ、
皆、「強い」俺しか見ない事に。


俺が「弱く」なれば、誰も俺なんて見ない。
俺がここにいる意味は無い。



『……雛香!』



飛びついてくる温もり。
柔らかい温度。
『雛香、お疲れ様!』
『…ああ』
『ねぇ雛香、終わったなら遊ぼう?』


そう、
君だけだった。


どんな俺でも、必要としてくれたのは。
だから、決めた。
君を守ると。
優しくて緩くて暖かい、
そんな君はすぐ壊れてしまうだろうから。
俺が、もっと強くなって、
君を、いつまでも、
守る。





って、





『……ねえ』


ぐらり、
銀が遠ざかる。


赤と、
滲む君の肌の白だけ、
浮かび上がって、




『…大好きだからだよ、雛香』







……ああ。
あの時死んでしまえれば、
良かったのに。






「宮野ッ?!おいっ?!」


どこか遠くで焦燥に満ちた声が聞こえたが、
それは雛香の意識を取り戻すには至らなかった。


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