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獄寺隼人と足の傷


「………な」

振り返り、あぜんとした。

「…なんだよ、その顔」

ぐしゃぐしゃと己の髪を掻き乱しながら、獄寺はふわりと1つ、妖艶な仕草であくびをした。

「……いや」

心臓がばくばく言っている。
先ほどの言葉を聞かれていなければいいのだが。
「…いつから起きてたんだ」
「…は?…さっき?」
若干首をかしげ、かったるそうに獄寺は煙草に火を付ける。
そのまま、いつも通りの仕草で口に咥えた。

「…なんだよ」
「…なんでも」

その一連の動作をただ眺めていた雛香に、獄寺が当然不審そうな目を向ける。

「…なんでも、ないんだ」

俺、帰らないと。
まるで逃げるかのように背を向けた雛香に、獄寺が低い声を掛けた。


「…宮野、てめぇ…」


ぎくり、
背中が冷えた。



「…怪我してんじゃねーか、足」



……は?
ぽかんとしたまま振り返ると、獄寺がなぜか吹き出した。
「何だよ、その顔っ…ははっ」
「何笑ってやがる獄寺ふざけんな殺す」
「てめっ、喧嘩売ってんのか、人がその足心配してやったのに」

足?

眉をひそめて視線を落とせば、
右足の上履きに血が滲んでいるのが見えた。
「…ああ」
おおかたあのクソ大魔神のせいだろう。
「…大丈夫」
対した怪我じゃないだろう。指摘されて初めて痛みを感じたくらいだ。
「じゃあな、獄寺」
ひらり、
手を振って今度こそ背を向ければ、

「待てよ」
「はっ?!」

ぐい、と肩を引っ張られた。

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