I bite you to death! | ナノ

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守るべきもの


「……獄寺、隼人」

吐息を言葉に変えて、呟く。
相手は机に顔を突っ伏したまま、ぴくりともしなかった。

「…何してんだよ、10代目右腕」

ため息。
いつも沢田と下校を共にしていたはずなのに、一体どうしたのか。
別に放っておけばいいのに、
なぜか足を進めていた。

「……。」

近付くと夕陽に照らされた銀髪がきらきらと光っているのがよく見えた。
こいつ、案外無防備なんだなと思いながら、
その頭に手を添える。
くしゃくしゃ、
掻き乱しても、獄寺は少しも起きる様子が無い。


「…ばーか」


思わず、笑っていた。
笑う、といっても口元をつり上げた程度で、雛乃のような無邪気な笑みとは程遠いだろうが。


「…そんなんじゃ、殺されちゃうぜ」


あんたの大事な、
沢田、綱吉。



ふぅ、と息を吐く。
あのわがまま大魔王との戦闘のせいで疲れているのだろうか、
自分でも訳がわからないことをしてしまった。

帰ろう。

きびすを返す。
雛香の予想では、双子の弟は沢田達と帰ったと見ていた。
つい数日前、自分と友達になりたいと妙に甘い事を言った沢田の側には、
常にそれなりの腕を持つ獄寺と山本がいるから、安心していた。
だがその獄寺がここにいるということは、必然的に雛乃の守りが手薄になる。


「…行かなきゃ」


雛乃は、守る。
命に、代えても。


カバンを肩に引っ掛け、教室の扉に手を掛けたその時、


「…おい、宮野」


後ろから喉をざらつく低い声が聞こえて、
息が詰まった。

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