ささやかな寂寞 雲雀恭弥あらため、暴君という名の風紀委員長との激戦になんとかケリが付いたのは、それから数時間後だった。 「……疲れた…」 うんざりした吐息を吐きつつ雛香は放課後の教室に戻ったが、 ホームルームが終わったそこには、生憎誰もいなかった。 「……雛乃、帰ったのかな」 教室を見渡し、呟く。 人懐っこくて愛想の良い雛乃は、自分なんかよりとっくにたくさんの友達に囲まれていた。 昼だって放課だって、雛香と一緒にいなくても、行動を共にしてくれる人間はたくさんいる。 それでも雛香に手を伸ばしてくる、そんな雛乃の、 暖かさが、 優しさが、 鈍感さが、 雛香にとっての唯一の救い。 記憶を失くした君への、 俺の尽きない罪悪感の中で。 ただ、君が俺を慕ってくれることが。 無意識のうちに息を吐いていた。 そのまま何の気なしに自分の席へ歩みを進めて、 ぎくり、 身体が硬直した。 誰もいないと思っていた教室の片隅、 鈍く光る銀色が、机にうずくまっていた。 |