My lover. | ナノ



マイ ラヴァー、あなたに

■ ■ ■


「ちょっ、と」
「何」
「痛い、」
「何が」
「手、痛いっての」
「煩い」
「、は、いや待てって、」
「黙れ」
「っ、雲雀!」

 ガチャン。手荒く応接室のドアが閉まる。
 引きずるようにして手首を掴む雲雀の背中は、さっきから一度も振り返らない。

「なんなんだよ、雲雀なんか変だって、」
「煩い」

 うるさいうるさいうるさい。だまれ。雲雀はさっきからそれしか言わない。
 ソファに背中を押し付けられる。
 いつも仕事をするために座っているその場所は、制服越しでもはっきりわかるほど冷たかった。

「ちょっ……雲雀」
「ほんとムカつく」

 ずたずたに咬み殺してやればよかった。そう吐き捨てるように言い放った雲雀が、郁の上に覆い被さる。ぎ、とソファが軋んだ。
 真上で唇を真一文字にきゅうっと結び、ありありと不機嫌の色を浮かべた雲雀の顔を、郁は戸惑いと不安に揺れながら、ただ見上げていた。――え、何この状況。
 一方の雲雀は苛立だしげに舌打ちをして、ふいに顔を近付ける。
 そのまま――何の躊躇いもなく、郁の唇に噛み付くように口付けた。

 え。

 あまりにびっくりしすぎて、郁はただただぼうっとしていた。雲雀の舌がなぞるように唇を舐めあげ侵入する。それにすらろくに抵抗できずに、郁はただ目を白黒させてあっさり受け入れた。

「……は、あ、っ」
「……わかった」

 唇が、離れる。
 思わず深い息を吐き出した郁の上で、口元を手の甲で拭っていた雲雀が、ふと、という様子で首を傾けた。どこか強い光の煌めく瞳に、郁は思わず首をすくめる。

「……な、に。雲雀」
「君限定で僕が甘いワケも、君が女子や小動物らと群れてると苛々するのも、今六道骸をずたずたに咬み殺したい理由も、……全部」

 最後はちょっと不穏当すぎるんでどうかと思います。
 呼吸を整え、ばくばくする心臓を押さえようとしながら、郁はただそれだけ思った。
 あと、すっきりしたように笑う、雲雀の顔がきれいだとも。




「――僕は、どうやら君が好きらしい。郁」





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -