嫉視
■ ■ ■
「……君は、誰を愛しているの」
そう尋ねた雲雀に、沙良は少しだけ微笑んだ。
口の端を持ち上げるー鋭利な笑みを。
「何を言っているの?…雲雀」
膝上に自身の体をのせ、かき抱くように腕を回す雲雀に、沙良はささやいた。
「知っているだろう?その答えなんて」
雲雀は、目を閉じる。
告げられる言葉がいたくて、刺すようで、
けれどもしかしたらーそんな淡い期待が、愚かにも捨てられずに。
「……僕は、求められるから答えるーそれだけだよ」
目を閉じる。キツく瞑る。
そうすれば、彼の冷たいほどに空々しい言葉を、少しでも緩和できるようなーそんな、気がして。
「……なぜ」
呟いた雲雀に、沙良はただ、だらりと腕を下ろす。
決して自分から抱き返しも手を伸ばしもしない彼は、
あまりにも薄情で、やさしかった。
「……ひばり」
耳元で、掠れた声音が響く。鼓膜を震わす。
「僕は、"ボンゴレの華"だ。君に応えることは、
……できない」
いっそ甘やかなその宣言にー
雲雀は、きつく強く、細い肢体を抱きしめた。
せめてー彼の身体に、この苦しみが刻まれればいいのに、と。