それが、はじまりだった
■ ■ ■
――それは、恋だった。
紛れもなく、恋だった。
「これで32回目の遅刻……君、よっぽど咬み殺されたいんだね?」
「うわーいゴメンなさい委員長さん、俺まだ生きてたいんで余生の余地を!」
「咬み殺す」
「マジでスミマセンでした許せ!」
狙い違わず脳天に振り下ろされるトンファーの柄に、冷や汗をだらだら流しつつ両手で押しとどめる笑顔の少年。
その笑みはかなり引き攣っていたが、対する学ランの少年はむしろ嬉しそうににやり、と口角を上げた。
「君のその生意気さ、いい加減になんとかしたいと思っていたところだからね……ちょうどいいよ。このまま応接室に連行してあげる」
「マジで勘弁して下さい先輩!いや先輩か知りませんけど」
ギリギリとトンファーを食い止めながら、頬を引き攣らせる並中生徒、楽しげに笑う風紀委員長。
校門で何やら騒動を繰り広げる、そんな2人を遠巻きに眺めつつコッソリ横を通りながら、2年A組・沢田綱吉ことツナはおそるおそる口を開いた。
「あ、あの2人……仲良いよね……」
「そうっスか?俺あの生徒、初めて見ましたよ」
「何言ってんだよ獄寺ー、あいつけっこー有名だぜ?」
ツナの言葉に反応するのは、常に傍らに控える自称ツナ(10代目)の右腕・獄寺隼人と野球少年・山本武。
飄々と笑い、獄寺の肩に手をかけた山本に、獄寺はキッと睨みを効かせると苛々と噛み付いた。
「あぁ?!うっせーんだよ野球バカが!」
「ふ、2人とも、落ち着いて……」
慌ててツナが声をあげれば、途端にすみません10代目、としゅんとなる獄寺。
その横の山本は、相変わらず朗らかに言葉を紡いだ。
「あいつってアレだろー、1年B組、ユイ」
「えっ……誰?」
キョトンと首を傾げたツナの後ろ、今通り過ぎたその場所からひときわ大きな声があがった。
ぎょっと振り返る3人の先、脱兎のごとくこっちへまっすぐ走りよる少年、その表情は引き攣った笑みを浮かべた必死の形相。
そしてその背後、鈍色のトンファーを振りかざし、鬼神のごとく怒涛の勢いで迫り来るのは――。
「ひっ、ひぃいい?!」
「こっちきやがる!」
先輩×後輩。
初恋、切ない、叶わない、でもハッピーエンドみたいなのに憧れて書き始めました。
題名が色々とアレなのが1番の問題点だとは思っています。