覚悟と証 〈…このヴィーラファミリーの業を背負う、覚悟だ〉 凛とした表情で告げるマイア、 その黒い瞳をただ見つめ返す雛香。 「…業、ね」 ふっ、と思わず口元が緩んだ。 脳裏に浮かぶは、 5年間の逃亡の日々。 幼き雛乃の血まみれの両手、 火をつけ破壊した己のアジト、 『催眠』をかけ虚ろな目をした何人もの人々、 騙し裏切り、逃げ切った5年間。 そう、全ては雛乃のために。 「……俺は今まで、雛乃のためにいくつもの罪を重ねてきた。業も何も、」 目を閉じる。 体を支配していた痛みは、いつの間にか薄らいでいた。 「…そんなもの、今さらだ」 雛乃を守るためなら、 そう、なんだって。 〈あっは…あは、あはははは!!〉 「?!」 突如響いた笑い声に、雛香はぎょっとし目を開ける。 目の前、体を2つに折り笑う、雛乃に瓜二つの青年。確かレイア、とか言ったような。 〈あは、ははは、ねね、僕君のこと気に入ったよ、デーチモ!〉 「?!」 瞬きする間も無く目の前に現れた顔に、 雛香は息を呑み反射的に後ずさる。 だがそれを許さないかのようにレイアの腕が伸び、反応する前にぐっと腰を引き寄せた。 「なっ、何を、」 〈ふふ…そのマイアとそっくりな目も、弟を想うちょっとイかれてるレベルの愛情も、何よりその半端ない自己犠牲精神……うん、まさに僕の好みあだだだだっ?!〉 〈いい加減本当に消すぞ〉 〈や、待って待ってマイア!目が怖いよ?!〉 若干引き気味の雛香の前、 思いっきり腕を捻りあげられ目をむくレイア、その背後で冷ややかな顔をするマイア。 この2人が自分の祖先かよ、と雛香は頭を抱えたくなった。下手に見た目が似てる分タチが悪い。 〈…そうか、そうだな。お前の覚悟はもうとっくに決まっている〉 〈だねー。どーするの、マイア?〉 真顔に戻るマイアに、その腕にひっつき笑うレイア。 雛香が眉をひそめれば、ゆらり、双子の姿が再びまばゆく発光し始めた。 〈なら、お前に託そう…ヴィーラファミリーが過去に捨て去った、絆の証を〉 〈あとは我が血縁が犯した、愚かな過ちの償いを、ねー〉 子どもの尻拭いは親がしなくちゃ、 そう言いにっこり笑ったレイアの顔は、 一瞬、確かに雛乃に被り、しかしブレた。 「…あかし、って」 いよいよ眩しくて目が開けられない。 手をかざし目を細める雛香の前で、 凛とした声だけが響き渡った。 〈ヴィーラファミリーが過去にボンゴレファミリーより受け取ったー強大な力を秘めた、リングだ〉 |