I bite you to death! | ナノ

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始まりの予感


「赤ん坊から聞いたとおりだ。僕の知るこの時代の君には、程遠いね」
「くっ」
眼前、殺そうと迫る紫のハリネズミ、
耳を打つは冷ややかな声。
ツナはギリッと歯ぎしりし、炎を宿す両手に力を込めた。



時は遡ること数分前、
いつものように修業を開始しようとしたツナに、
ラルが指導を下りると告げたのが全てのはじまりだった。


『…どういうことだ、ラル・ミルチ』
『沢田、お前にこれ以上のレベルアップは望めない。俺の予想よりレベルが低すぎる』
『だが実際にここまで、』
『お前の力はこんなものではない!』

いく日か前より遥かに強大な炎をまとうツナ、
しかし険しい表情で対峙するラル・ミルチ。
肌をピリッと焼くような空気が流れた、

そこへ。


『ッ!!』
『気を抜けば死ぬよ』

突如、
ツナのもとへと迫り来る、轟音と光。


『…おまえは!』
『君の才能をこじあける』


何の感情も浮かんでいない表情で現れた、雲雀恭弥はそう言った。





「おいてめえっ!!10代目にいきなり何してやがる!!」
「雲雀、いくらなんでも、」
「煩いな。君たちは下がってなよ」

空中でぶつかり合う紫と橙に、
真下で交わされるは冷ややかな会話。
食ってかかる獄寺と眉を寄せる山本に見向きもせず、
いまだ激しい戦闘を繰り広げる頭上を雲雀はただ無表情に見上げた。

「…さて、そろそろ、かな」
頭上のバリネズミとツナを眺め、
雲雀が口を開きかけた、

その時。



バシュッ。
「ここなんなんだよ迷路かよ!!……て、え」
「……は」



突如自動扉が開き、
1人の少年が勢いよく飛び込んできた。



思わず無意識に息を詰める。
きょとんとあたりを見渡す相手を、雲雀は凍りついたまま見つめた。

無造作に目にかかる黒髪を払うのは、
3日前自分が突き放し、そして背を向けた、彼。
その首元の包帯は、目に沁みるほどくっきりと白く。


「…え、何ここなんで皆さんおそろいで……て、雲雀!!」


突如名を呼ばれ、思わずびくりと肩が動く。
この自分が不覚にも動揺してしまったことに、普段なら苛立ちを覚えるところだがー今は、それどころではない。


「お前な、こんなとこいるなよ。俺が朝からどれだけ歩き回ったかと、」


状況を把握していないらしき相手は、何やら恨みがましくつらつらと言葉を並べ出す。
だが、そこでふと口をつぐみ足を止め、
ついっと頭上へ目を動かした。

今さらながら、頭上で鳴り響く轟音に気が付いたらしい。
見上げたその瞳が、驚きに大きく開かれる。


「……は…」
「…雛香……」


思わず呼びかけた雲雀の前、
しかし黒髪の少年は振り向きもせず、

瞬間。



「…なっ、ツナ!!」



「!待っ、」

察した雲雀が手を伸ばした時にはすでに遅く。

雛香は増殖した雲の上を駆け上がり、
球針態に包み込まれるツナのもとへと銃を両手に飛び込んでいた。



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