どん底から目覚める世界 『もちろんリボーンも……いない』 衝撃的すぎた。 いきなり10年後にぶっ飛んで、しかも自分は死んでいて、いきなり見たこともない人に襲われて…。 さらには。 (…リボーンがいない、なんて…そんなこと) あるわけない、と否定したいのにツナの脳内が納得してくれない。 自分の中の何かが、はっきりと告げていたからだ。 嘘じゃない、と。 「…ボンゴレ本部は2日前、壊滅状態に陥った」 未だ状況を理解できていないツナ達に、焚き火を囲みながら語り出す、門外顧問下の人間だというラル・ミルチ。 この人、右頬痛そうだけど大丈夫なのかな、なんて考えていたツナは、告げられた事実に顔をぶん殴られた気がした。 「…え、ええっ?!」 「だまされないでください10代目!あの大ボンゴレが壊滅なんて…!」 「本当だ」 動揺に叫ぶ獄寺達を前に、あくまで淡々と告げる彼女。 その表情はどこまでも無であり、何も読み取れない。 「この時代にはそれができるファミリーがいる……ミルフィオーレファミリー、ボスの名は白蘭」 「!!」 10年後の獄寺も口にしていた人物に、ツナは大きく目を見開いた。 「この時代、戦局を左右するのはリングと匣(ボックス)だ。奴らはリングと匣を略奪することにより力をつけ、同じ目的でボンゴレにも急襲した」 「ボンゴレリングが狙いだってのか?!」 「…いや、重要なリングはそれだけではない。沈黙の掟(オメルタ)に守られてきたマフィアのリングには、人知を超えた力が宿っていたんだ。例えばアレを、」 見ろ、と頭上に浮かぶ気球へ目をやったラル・ミルチは、 ぴたり、動きを止めた。 「…っ!」 途端、ばっと砂をかけ火を消すラル・ミルチ。 突然の行動に、獄寺が不審な声をあげた。 「何しやがんだ!」 「敵だ!!」 鼓膜を鋭く打つ声音に、2人はぎょっと凍りつく。 「死にたくなかったら…俺の言うことを聞いていろ」 ツナ達の前に現れたのは、ヴァリアー戦で見たよりひと回り巨体のストゥラオ・モスカ。 あぜんとするツナと獄寺の前、低い唸り声とともに背を向ける相手。 しかし次の瞬間、 モスカはぐるりと首を回し、再びこちらにピタリと標準を合わせた。 「なぜだ?!お前たち、他にリングを持っていないだろうな?!」 「あ、これ…!」 思い出したツナが慌てて取り出したのは、未来へ来る前にランチアから授かったリング。 「!!馬鹿、なぜ早く…!」 目を大きく開いたラル・ミルチが手を伸ばすが、それより早く近づいてくる巨体。 くっ、と顔を歪め、彼女は素早く立ち上がった。 一瞬にして思考を切り替え、歯噛みしながらも己の左腕をかまえる。 「アジトまであとわずかというところで…!」 「そんな…」 ツナ達が息を呑んだその時、 「鮫衝撃〈アタッコ・ディ・スクアーロ〉!」 「オルトロスの閃光〈ランポ・ディ・ルーチェ・オルトロ〉!」 突如地が震え、 目もくらむようなまばゆい光が放たれた。 「これは…」 「えっ……?!」 とっさに顔を覆った手のひらをどければ、 3人の前に現れたのは。 「助っ人とーじょーっ」 「なんとかセーフ、ってとこかな?」 覚えのある、 のどかな声音と暖かな笑み。 「…や、山本?!と……雛乃?!」 |