I bite you to death! | ナノ

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ひっかかり


「雛香?」
「……え、あ、雛乃?どうした?」
「手、止まってるけど…ご飯、おいしくない?」
「…え?あ、いや!めちゃくちゃおいしいよ」

止まっていたフォークを慌てて口に運べば、
ベッドの傍ら、グラスにお茶を注いでいた雛乃は不審そうに眉を下げた。

「…やっぱり味付け、濃かった?」
「いや全然」

10年経ってさらに料理の腕を上げたんだな、
と言えば、雛乃は嬉しそうに頬を染めた。




勝手に医療室を抜け出し倒れた事がばれてから、早くも10日。
当然こっぴどく雛乃に(半泣きで)怒られツナにほれ見たことかと呆れられ、リボーンには危うく気絶するほどのレベルの蹴りを喰らって(倒れた相手に向かって!)、と散々な目にあったのだが。

監視の強化、という名目で愛しき弟が常に側にはべっている状態を見れば、
これはまったくもって悪くないな、というのが雛香の感想だった。
ちなみにツナは見舞いに来るたび、兄にべったりひっつく雛乃にほおを引き攣らせていたりする。



そう、満足だ。
と、雛香は思う。
怪我も治ってきて、体調も言われているほど悪くもなくて。
修業しているツナの話を聞けばもどかしさも感じるが、ちょっとでも動けば傍らの弟に泣きそうな顔をされるのだから仕方ない。

カラン、と空になった皿にフォークを置く。
雛乃の作ったパスタは美味しくて、味付けは濃いどころか最高だった。
そういえば今の雛乃の得意料理もパスタだったな、
と、どことなくぼんやりとした思考を巡らす。


「……雛香?」


まばたきをして首を回せば、
10年を経て大人びた、あどけなさのない目と目が合った。
その黒色が、困惑に満ちる。

「…雛香、やっぱりパスタ美味しくなかった?」
「…え、」
まさか、そんな。
反射的に口を開くが、その前に雛乃の両手が頬を包んだ。


「…雛香、変だよ……何か、あったの?」



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