やさしい時間 「……え、で雛香くんがこれ作ったの?」 「…まあ、ビアンキと合同だけど」 「いえ、私が作ったのよ」 「なんでそこで大ウソつくんだよ!作ったのほぼ俺じゃねえか!」 「生地をまとめて切り取って、オーブンに入れて様子見たのは私よ」 「それを虫抜いてきれいにしてまともな見た目のちゃんとしたスコーンにしたのは俺だっての!」 「ま、まあまあ2人とも落ち着いて…」 何やら仲良くなった(?)らしい2人に、 ツナは口元を引きつらせながら両手を振った。 ラル・ミルチによるハイパーモードでの修業中(ちなみに先日遅刻した際には、死ぬほど怒られ殴られました)、なんとか休憩をもらえたツナが匂いに釣られてやってきたのは調理場。 てっきり女子達(京子とハル)かと思いひょっこり覗いてみたのだが、なぜかそこにいたのはー なんともちぐはぐな背丈の、2人組だった。 「…えと、ほんとに食べていいの?俺」 「もちろん。そのために作ったんだから」 「私が力を貸してまでね」 「お前けっこう恩着せがましいよな!」 何やらまたも隣で罵り合いだす2人を横目に、 ツナはスコーンの三角形をフォークで崩し、口に運ぶ。 「…ん……」 途端、ピタリと口をつぐみこちらを凝視する2人。 「…美味しい!これすっごく美味しいよ!」 「よっしゃ」「当然ね」 ぱあっと顔を輝かせたツナに、 嬉しそうに笑う雛香、平然と答えながらも口元を緩めるビアンキ。 「すごいね、雛香君…お弁当だけじゃなくて、こんなのも作れちゃうんだ」 「あら、ほぼ私の功績よ」 「だから違うだろうが!」 またも睨み合いを開始する2人に、ツナは慌てて仲裁に飛び込む。 全く、とぼやきながらも、 ツナの顔は嬉しそうに綻んでいた。 この後、 休憩時間を過ぎても来ないツナにしびれを切らし、探し回ったラルが怒号と共に調理場へ飛び込んでくるのは、 また別の話だったりする。 |