I bite you to death! | ナノ

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集結の合図


体勢を立て直したγの前、
数多のボールに進路を阻まれ舌打ちをする雲雀。

「3番ボール」
「!」

とっさに左腕を薙げば、

「ぐっ」
「ビンゴ」

トンファーに衝突し電撃を散らすボール。

雲雀は小さく舌打ちをし、軽く左腕を振る。
たったそれだけの動作で己の腕の調子を確かめると、何事もなかったかのように再びγへ向けて地を蹴った。

「あいにく、このショットの軌道に人が生きられるだけの隙間は無いんでね」
「確かに全ては避け切れそうにない」
次々と襲い来るボールの波をかいくぐり、雲雀は口角を上げうっすら笑む。


「だから、当たるのはこの一球だけって決めたのさ」


「!」
驚きに目をみはるγの前、
急速に距離を詰め凶器を振りかぶる雲雀の姿。
(「だから初めから左腕だけに防御の炎を…なんて奴…」)

この男は、ペアで動く事が多かったと聞いていたのだが。
単独でも揺るぎなく迫るその姿に、γは微かに焦りを見せ足へと炎の波動を伝わらせる。
(「…そう、確か…次期門外顧問と組む事が多かった、と…」)
聞き覚えのある噂を記憶から手繰り寄せる。
ちら、一瞬目をやった背後には、
四肢を投げ出し横たわる小さな体。

「逃がさないよ」
「それとこれとは話が別だ」
隙を逃さずトンファーを振るう雲雀に、
勢いよく空へ逃げるγ。
そのまま雲雀の手の届かない空中からキューを振るおうとした、


刹那。


「……っ、な」


胸元を貫く、異物感。


「…なんだ、こりゃあ…」








「…そう、君の狐の炎を元に、あのハリネズミがこれだけの雲を発生させたのさ」
「そうか…雲属性の特徴は…『増殖』だった、な…」

呻くγを貫き浮かび上がるのは、
空を覆うがごとく巨大に膨れ上がる、球針態。
雲雀は淡々と答えると、すばやくトンファーに炎を宿した。

「さあ、終わるよ…雛香に手を出した分も、その身で支払ってもらう」
「…噂は本当、だったんだな」

地を蹴り飛んだ雲雀の言葉に、γが瞼を下ろしつつ呟く。


「…雲の守護者と宮野雛香……奴らは最強のコンビであり、そして…」


雲雀は、飛ぶ。
雲を使い軽やかに浮かび上がり、
その両手に凶悪な愛武器を携えて。


まるで、何も聞こえていないかのように。


「……互いを、最も大切な者と、していた、と…」







「…あっ、あれは!」
草をかき分け顔を出したツナは、空へと顔を上げ目をまんまるく見開く。

「遅すぎるよ、君達」

一瞬目をやると、雲雀はそれ以上の興味を見せず、ただ勢いよく雲の足場を踏み上がった。

「…あ、あれって…もしかして!」
戸惑いと期待、2つの感情をあらわにし叫ぶツナの背後、


宮野雛乃は、静かに足を止めた。


その眉根をかすかに寄せ、
ひどく複雑そうな表情で。


「…雲雀、さん…」





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