終焉の予感 「立ちなよ」 周囲一帯を震わす轟音、 そしてもうもうと立ち込める、砂と瓦礫と粉塵。 「…ふー、さすがだ」 その中からバチバチと耳につく音をまとい現れるのは、傷を負ったγの姿。 「もし守護者だったなら最強だって噂も本当らしいな」 「うまくダメージを逃したね」 γの言葉を完全に無視し、雲雀はすっとトンファーをかまえる。 「…ふー、参った」 一方のγも静かにキューをかまえ、 「楽しくなってきやがったぜ」 ふ、と愉しげに笑んだかと思えば。 次の瞬間、勢いよくボールを撃った。 「こっちの方角だよ」 「大丈夫かな、獄寺君たち…」 「だめだ、敵がいる。迂回するしかないぞ、雛乃」 物陰に隠れつつ移動するツナ達は、煙の上がる方向に焦りを感じながらももどかしく進むしかない。 「…突っきれないかな、ラル」 「何を言い出している」 いくら焦っているとはいえ、まさかの雛乃の言葉にラル・ミルチは目をむく。 常の雛乃を知っている分、ラルにとっては彼の判断とは思えない、無謀ととれる発言だった。 「僕の幻覚でここを一気に突っ切れば、神社まで近い」 「馬鹿言うな、いくらお前の幻覚でも限界がある」 突然(小声ながらも)言い争いを始めた大人2人に、間に挟まれたツナは目を白黒させておろおろするしかない。 「…何を焦っている?」 ラルは鼻の頭に皺を寄せる。 「この状況で焦らない方がおかしくない?」 「それは当然だ。だが……お前がそれほど焦っているのは、らしくない」 淡々と答えつつもわずかに苛立ちの覗く雛乃の声音に、ますます訝しげに眉をひそめるラル。 その真ん中、ツナは急速に不穏へと化す空気に、慌てて声をあげた。 「ふ、2人とも落ち着いてよ!雛乃もどうしたの?」 確かに、この時代に来てからの雛乃に比べて、今の彼は随分冷静さに欠ける気がする。 獄寺達が心配でたまらないのはもちろんツナも同じだったが、なんていうか、今目の前の彼は妙な目付きをしているのだ。 そう、ちょうど少し前、 ザンザスと対峙した時の、あの危うい雰囲気をどことなく感じさせる、幼い彼に。 最愛の兄の身に危険を及ぼす相手と対峙した時と、同じー。 「…予感がするんだ」 ぽつり、雛乃はそう言い、顎を上げる。 その目線が向けられる先、鋭く見やるは遥か彼方の山のふもと。 並盛神社のある、その遠い地点。 「……雛香…?」 |