I bite you to death! | ナノ

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対峙する2人


「!!」

γは眉を寄せ、己の武器を止めた人物へ視線を向ける。
この自分が気配に気付かなかったとは。
そんなに油断していたつもりは、なかったのだが。

「…っけんな…」
「……?お前は…」

目の前の2人より小柄な身長、揺れる黒髪、
そしてその下から覗く、強烈な光を宿した瞳ー。


「…殺す」
「!!」


とっさに背後へ飛んだ足元、
視認できない速さで突き刺さるナイフの列。

「…こりゃあ、驚いたな」

大きく下がり、いったん距離を置く。
ポンポン、とキューで手を叩き、γは小さく肩をすくめた。

「…お前も若い、が……問題はそこじゃねえ」
「死ね」

しかし、相手の少年に聞き入る様子はない。
ゆらり、両の手にナイフをかまえるその全身から、彼はビリビリと空気を震わすような殺気を放つ。


「…死んだという報告を受けたんだがな……宮野雛香」
「…へえ?」


口元をゆがめ、その目に奇っ怪なほど鋭い光を宿し。


「…なら、冥土の底から帰ってきたっつーことで良いよ」


刹那、
彼は全てのナイフを空に放った。








空を切った無数のナイフは全て弾かれた。
本人のまとう雷、あれも厄介だがそれよりも問題は謎の生き物の方。

(……狐?)

にしては奇妙だ。自分が知っている狐は飛んだり空を駆けたり、ましてや火花を散らしたりしない。
頭の片隅にずいぶん冷静な部分があるのを感じながら、しかし雛香は無表情にナイフを投げる。
脳の片隅、その一部分以外の全身を支配するのは、
煮えたぎる、紛れもない怒り。


(…必ず、こいつは殺す)


今までなんであれ、人を殺した事は無かった。
だが、目の前で悠々と飛ぶ相手は、絶対に。


(…許すか)


滅茶苦茶にされた獄寺と山本を見た瞬間、
雛香の脳裏を支配したのは、ただそれだけ。

「…こいつはビックリだな」

バチバチと耳障りな音とともにナイフを跳ね返し、
名も知らぬ男は空に浮き、薄く笑う。

「降りてこいよ」
「いやはや…ただの武器ごときで、まさかここまでやるとはな」
「はあ?」

イラ立つ感情に任せて眉を寄せる。
馬鹿にしているのだろうか。
どのようなマジックを使っているかはしらないが、確かに相手のような芸当は出来ない。
しかし、つい最近までザンザス(を始めあのクソ王子やマーモン)に(無理やり)鍛えられていた身としては、そうそう容易くねじ伏せられるつもりは無い。


「…いやー、恐れいっちまって……」


心臓が跳ねる。
全身を貫く、嫌な感覚。
何か、何かが、



「…うっかり手ぇ出すの、やめるとこだったぜ」


来る。



瞬間、

何が起きたか、理解できなかった。



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