属性 「…そういえば、雛乃の属性は何なの?」 「あ、そうか、ツナは見てなかったね」 ツナは橙の、獄寺は赤の、山本は青の炎を灯したところで、修業はいったん終了となった。 京子とハルの待つ食堂へ向かいながら、ふとツナは隣を歩く雛乃に質問をぶつける。 「僕の炎の色は藍色〈インディゴ〉…つまり、霧の属性だよ」 「キリ?」 「そう」 穏やかに微笑み答える雛乃に、ツナの頭に浮かぶのは紫髪のあの男。 霧の守護者、と呼ばれるくらいだし、おそらく彼も藍色の炎を灯せるに違いないだろう。 「…て、ことはもしかして……骸と同じ…?」 「なんか言ったツナ?」 「エッ?!」 「なんか言ったかなツナ?」 ぎょっと顔をあげたツナの上、ニッコリ微笑む雛乃の顔。 だが体の横の拳が不自然なほど固く握られている。 「…ああーっとなんでもないっ!なんでもないですっ!」 「だよね、良かったあ」 (「10年経って腹黒さが増してる、絶対増してるよ雛乃…!」) 冷や汗をかくツナ。横を平然と歩く雛乃。 この10年間で骸といったい何があったのか、ツナは空恐ろしい気持ちでいっぱいである。 「…ちなみに、イイコト教えといてあげるツナ」 「へ?」 再び顔を上げたその先で、雛乃は先程とは異なる、優しげな笑みを浮かべていた。 「実は、雛香の属性もね……」 飛行機の座席に腰掛けようとかがんだところで、胸のポケットから何かが転がり落ちる。 小さく舌打ちをして何が落ちたのかと目をこらせば、視界に飛び込むのは小さな橙。 瞬間、 何か考える前に反射的に拾い上げていた。 オレンジ色に光る、その小さな立方体を。 拾う。手の内に収める。 静かに転がせば、たいして重みのないそれは簡単に手の上でころころと転がった。 座席に深く腰掛け直し、スーツに身を包んだ雲雀恭弥は目を細める。 手のひらで転がる、小さな匣を見つめ。 『……愛してる、から…』 笑んだ彼の手のひらからこぼれ落ちた、 橙色の小さな匣。 「……嘘吐き」 最後の最後に、そんなこと言うだなんて。 本当に、君は。 雲雀はポケットに匣を入れると、その上から静かに胸を押さえた。 自分には開匣できない、大空の匣。 「……雛香」 口にして、ひどく懐かしく感じた。 考える事も口にする事も、自然と避けてきた名前。 自嘲の笑みが、口元をゆがめる。 「…今、僕に会ったとしたら」 君は、同じ言葉を口にしてくれるのかな。 ねえ、宮野雛香。 |