始まるは紛れも無い危機 「ツナ、笹川を任せた!敵はこっちで引き受ける!」 「う、うん!わかった!!」 轟音の元、現れた10年後のイーピンとランボ、そしてハルの姿に驚く間も無く、ツナは爆風に消えた京子を探しに駆け出した。 叫び、走り去るツナを山本と獄寺は見送る、 暇もなく次の瞬間、敵の攻撃が撃ち出された。 だが。 「…くっそ、なんで何も起きねーんだ!」 「炎をイメージするんだ、獄寺」 「なっ…兄貴の炎までしのぎやがった?!」 その攻撃は山本によりあっさりいなされ、 煙の中より現れるのは無事な5人の姿。 野猿の悪態を歯牙にかける様子もなく、獄寺は何度も匣にリングをはめ込む。 山本だけにいい顔はさせない、とムキになるその様子を見やった山本は、ふ、と口角を上げて微笑んだ。 「死ぬ気を炎にするイメージだ……そう、覚悟を炎に変えるんだよ」 「あぁ?覚悟を炎にだ?」 「お前ならできるさ。いやできてたんだぜ!」 ははっ、と笑った山本が、次の瞬間表情を引き締める。 「ま、でも今回は俺に任せとけ。ツナも心配だしな…下がってろ、獄寺」 「!てめっ、」 一瞬噛みつきかけた獄寺は、だが舌打ちをすると渋々口をつぐんだ。 「10年のハンデがあるからってカッコつけやがって……今回だけはくれてやるから、早く見せてみろよっ!」 「おー、そーこなくっちゃな」 歯を見せて笑い、山本が匣を空に投げる。 「こいつで…」 決めるぜ。 苛々と見守っていた獄寺の前、 その姿が突然、白煙に包まれー。 「……まずい」 雛乃は呟き、顔をゆがめた。 手首にはめた腕時計を見、小さく舌打ちをする。 兄がいた頃はしなかったのに、最近なぜか無意識のうちによくしてしまう動作だ。 なぜなのかは、自分でもよくわからない。 ふ、と喉元に込み上げる、棘を帯びたような熱を呑み込む。 今は、そんな感傷に浸っている時じゃない。 時計を見る。やはり時刻は変わらない。 「……僕とした事が」 任務でも私用でも、時間をミスったことなど1度も無かったのに。 「……気にかけてくれる人がいなくなったからかな」 ああ、ダメだ。 さっき切り替えようと思った心は、こうもたやすく胸を焼く熱に飲み込まれてしまう。 「…山本に、ひとめ会ってこようかな」 どうせ、ビアンキとフゥ太の迎えにはもう間に合わないだろう。 腕時計をはめ直し、雛乃はふう、と息を吐いた。 「いいや、どうせ僕が勝手に言いだしたことだから」 まあ、あの2人なら無事にここまで帰ってくるだろう。 きびすを返すと、雛乃は来た道を戻り出した。 その先、 何が待っているかなど露ほども知らず。 |