I bite you to death! | ナノ

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涙を流す資格も無いけど


『雛乃、行ってくるな』
『雲雀さんと、任務だったよね』
『ん、そうそう』
あいつホント喧嘩っ早いからさ、と笑う雛香。
『ふふ、無茶はしないでね?』
『あの暴君に言ってくれ』
すぐ匣出すんだよ、とこぼす兄の顔は、
けれどとても楽しそうで。

『……雛香』
『え、何?』

ふ、と顔を上げた兄に、
しかし喉元まで出かかった言葉は、口に出せなかった。

『……ううん、なんでも、ないよ』
『ええ?』

変な雛乃、と笑う雛香に、
胸を焦がすのは少しの後悔と、痛み。
それが嫉妬、と呼べるほどドス黒い物だったら、
こんなにもムキにはきっと、ならないのに。

『行ってきまーす』

そう、そんなふうに手を振る雛香の姿が、


これで最後だと、知っていたのなら。


『…ごめんね、雲雀さん』


二度と無いのだと、知っていたのなら。


『…もうちょっとぐらい、許して欲しいな…』


そんな子供じみたワガママを、
貫くことも無かったのに。






「……雛香」
呟く。
白い壁にぺたりと付けた額が、ひどく冷たくて。


『…バズーカの力を利用して…』
『…10年前の彼らに?』
『…そう、ボンゴレリングとともに』
『ねえ。つまりそれって、』


10年前の彼も、来るってことだよね。


『そんな計画なら、僕は降りる』
『雲雀さんっ!』
『宮野雛乃、君ならわかるでしょ?』


突き刺さる、黒い瞳。


『彼は最後まで、君を守ることだけを思っていた』
10年前なら、なおさら。



『…誰のせいで死んだかなんて、今さら聞かせられると思うの』


うっすら笑ったその目元は、自嘲と悲しみに満ちていて。


『……ひ、ば』
『どうしてもというのなら、』

どうしてもと、言うのなら。
息を詰めた自分に、雲雀は無表情に唇を動かした。


『彼の死は、君が……』






「……ごめんね、雛香」

今なら、言えるのに。


行ってきます、と笑い雲雀を追う彼の背中を、
行ってきなよ、と今なら思いきり押せるのに。


ねえ、僕はもう大丈夫だよ、
だから、雛香の好きなようにして。


その短い言葉を、
笑顔で綴ることができるのに。




「……雛香…ッ…」



こんな未来が来るとわかっていたなら。


子供みたいな駄々をこねて、
君をいつまでも引き止めるなんて。

しなかった、のに。



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