消えた基地と言葉 「基地が……!」 「メローネ基地が…消えた…!」 呆然とした声が飛び交う中、雲雀は横抱きにかかえた雛香をぐっと引き寄せた。 ほんのわずかに離れた地点には、まるで地面が削られたかのようなぽっかりとした空間が出来上がっている。 「こんなことが…!」 「でも、なんでオレ達だけ残れたんだろう?」 がくぜんとする面々の中、ツナがふと首を傾げる。 それを聞いた入江は、「彼が晴れのボンゴレリングと共に来たからさ」と微笑んだ。 「へ?それって…」 「極限に、」 きょとんとするツナ達の背後、おもむろに声を張り上げるひとつの影。 「ここはどこだーー?!!」 「!」 「あれは…」 「笹川先輩!」 ぱあっと顔を輝かせるツナ達を見つけ、10年前の笹川がぽかんと口を開ける。 「生きていたか沢田!お前達も行方不明で心配しとっ…!」 「しぃっ」 途端、叫び出す彼をツナは慌てて止めに掛かる。 そこへ、真剣な顔をした入江が口を開いた。 「我々が守られたのは7つのリングが揃い、結界が出来たからだ。……そして、こうして無事に全員生き延びた今こそ…君達に、渡したい物がある」 「!」 入江が手元を操作すると同時、動き出す背後の装置。 その中心がゆっくり動き、中から白い光が零れ出した。 「…この時代のボンゴレ10代目より君達に託されたーー"ボンゴレ匣"だ」 「…雛香君は、大丈夫かい?」 「!」 片手で雛香を支え、もう片方の手でボンゴレ匣を受け取った雲雀は、頭上からの声に顔を上げる。 片膝をつき雛香を支える雲雀の横、同じように膝を折るのは、心配そうな顔をした入江だった。 「…だい、じょうぶ。…頭は痛いけど」 「!雛香」 「雛香…!」 雲雀が答えるその前に、黒い頭がゆっくり動きだす。 途端、真横に張り付いていた雛乃が安堵の息を吐き出した。 「…っつ、なんかグラグラする…って、雲雀?なんだその匣…」 「今、ボンゴレ全員に渡したボンゴレ匣だ。君達、門外顧問にはないけれど…」 「や、俺にはケルがいるから十分、でっ、うわっ」 「!ちょっと」 雲雀の腕の中、雛香はこめかみを押さえつつ立ち上がりかけ、ふらついた。 とっさに雲雀がその肩を支え、なんとか転倒だけは免れる。 「雛香、無理したら…!」 「雛香君、僕は、君に言いたいことが…」 半泣き顔できっちり反対側の肩を支える雛乃の横、言いづらそうに口を開く入江。 だがそれ以上言葉が続く前にー 《てめーらぁ!!生きてんだろーなぁ!!》 あの、懐かしい声がー再び、ヘッドホンを震わせた。 |