I bite you to death! | ナノ

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再会


「たった今、ジャンニ―ニからイタリアの主力戦の情報が入ったぞ。……ザンザスが、敵の大将を倒したらしい」
「「!!」」「マジっすか?!」

リボーンの発言に、一旦落ち着きを取り戻した場が歓喜に湧きかえる。
ラルの介抱をしていたツナも、驚きと喜びに顔を輝かせた。

「…ザンザスが…!」
「良かったね雛香、でもそんなことよりとりあえず僕の事抱きしめて!今すぐに!」
「…まさか10年前の方が重症だったとはな…いくつになっても気持ちのわりぃ…」
「煩いな獄寺!僕は雛香が消えてから、死ぬほど探し回ってたんだからね!法の内も外も飛び越えて、僕にできる限りの方法で!」
「何してたんだてめぇは!!」

声を張り上げながら、同時に雛香の首に抱きつくという珍芸を繰り広げる雛乃へ向けて、獄寺の呆れ切った視線が注がれる。
もちろん当の本人は知らんふりで、場の空気などお構いなしだ。

「だってさっき、雲雀さんがひっついてるから雛香見えなかったんだよ。びっくりしたんだからね、いきなり雲雀さんの影から現れて!」
「ああ…ごめんな。心配かけたな、雛乃」
「いいよ、こうして会えたんだもん。でも雲雀さんは殺す」
「うん…そっか」

とりあえず、後半は聞かなかったことにしよう。
そう決め、ぎゅうぎゅう首に張り付く弟の頭を、雛香はよしよしと撫でてやった。久々の感触に、雛香の口元も自然と緩む。

10年後の雛乃に会っていたとはいえ、やはり自分の時代の彼が1番落ち着く、その事実に変わりはない。背の高さも同じになった今、こうして頭を撫でることもできるし。

包帯の巻かれた雛乃の腕をそっと撫でていれば、ふと視線を感じた。
首を回せば、案外近いところに黒い学ラン。

「雲雀…」
「…君」

何と言っていいかわからず、名前を呼ぶ。

雛香としては複雑な気分だった。騙すかのような最後の別れは未だに非常に納得がいっていなかったが、それは10年後の雲雀がやったことであって、目の前の雲雀が関与しているところではない。
そうだ、思えば、自分を好きだと言った雲雀も、目の前の雲雀ではないのだ。

…うわ、なんだそれ。頭が混乱しそうだ。
ぼんやり、こちらを見つめる雲雀を見返しながらとりとめもなくそう思う。
そっか、そうだ。

ー「今の」雲雀が俺を好きかなんて、わからないんだ。

「ちょっと、聞いてる?」
「ふへっ?!」

むにゅ。
突如頬を引っ張られて、おかしな声があがる。

「な、にふんだ!」
「ちょっと雲雀さん!今は雛香と僕だけのラブラブタイムだよ!邪魔しないでよ!」
「君、」

同時に抗議の声をあげる双子に構うことなく、雲雀はぐいっと雛香の頬を引っ張る。

「ひたっ!お、まへな、」
「その痕、何」
「ひへよ!…って、は?」

ぐいぐい容赦なく引っ張られて頬が痛い。千切れそうだ。
わけがわからず目だけ向ければ、妙な顔付きをしている雲雀と目が合った。

「…これ、」
唸るようにそう言って、雲雀は頬から手を放す。
やっと放してくれたかと、ヒリヒリする頬を雛香が労わる暇もなく、今度は襟に手が掛けられた。
そのまま、勢いよく引っ張られる。

「なっ、ちょっ、」
「雲雀さん何?!ここで雛香に何する気なの?!離れてよ雛香を襲っていいのは僕だけ、」
「コレだよ」

色々とアウトな発言をかます雛乃に構わず、雲雀は再び襟を引く。
もはや本来の伸縮性の限界を超えたその引っ張りように、ぎちぎちと生地が嫌な音を立て始めているが、雲雀は気が付いてもいないようだ。
何すんだこいつ、と予想外の近さに内心焦る雛香を前に、雲雀はトントン、と指先で下げた襟元を軽く叩く。

「は?て……っ!!」
「この痕、」

誰?

端的な、しかし非常によろしくない雲雀のご指摘にー雛香は、自分の顔がすぐさま赤くなっていくのを自覚した。

首元、今雲雀が指差しているだろうところには、おそらく昨夜あの男が、というか言うなら目の前の男が付けたのであろうあの印が、おそらくくっきり残っているに違いない。
夜明け前、見えるとこに付けてんじゃねえよと噛み付いた事を、なら隠せばいいじゃないと鼻で笑ったあの男の事を、なんとか苦労して見えないように服を着た事を、
ー今更、はっきりと思い出した。

「…え、ちょっと待って、雛香、これって…」

眼下、雲雀の指先を見て気が付いたらしい雛乃も、途端に目を開き震え出す。
ヤバい、これは非常にまずいと雛香は焦りだすが、この状況はどうしようもない。
正直に10年後の雲雀が、なんて言えるはずもないし、かと言って相手はごまかしが効かないタイプである。

「ちょっと、雛香?」
「雛香…どういうこと?とりあえず任意?無理矢理?そこ大事だよ?」

目の前には迫る2人。
というより任意って何なんだ雛乃。
じりじりと近付く2人の顔に、雛香は冷や汗をかきながらかつてない危機感を覚えて固まった、

ーそこへ。




《ーいいや、ただの小休止だよ》




その場の全てを凍りつかせるような声がー響いた。


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