本当の本当 一方。 遠く離れた、イタリアの地でー。 「……ベルセンパーイ。やっぱ前いってくださいよ。殺気が背中に痛いですー」 枝の上に次々と飛び移りながら、カエル頭の青年は平然と言い放つ。 「しししっ、やだね。脳と心臓どっち刺すか決めてるから待ってろ」 その後ろ、追いかける金髪の男もまた同じ。 「ホンット歪んじゃって生き物として最悪ですよねー。だから雛香さんにフラれるんすよー」 グサグサグサッ!! 「っっってーっ……今明らかにヤバめな音がしたんですけどー。まじミーの背中痛いんですけどー」 「お前がよけーな事言うからだってのクソガエル。前見て走れっつの。第一オレはフラれてねーよ」 「今はまだ、でしょー?」 グサッ! 「っ…いってぇこのアホ王子…ッ」 背中に数多のナイフを刺されたまま、涙目で林を駆けるカエル頭の青年ーフラン。 そしてその後ろを同じく尋常でない速度で追っていくのは、銀のティアラを頭に乗せ笑う、金髪の男ーベルだった。 「……背中に刺さった趣味の悪いナイフ、抜いてもいいですかー?いかにもオリジナルだぜーって主張するこの形状が、相当恥ずかしいんで」 「きれいに磨いて揃えて返せよ」 「それは嫌ですー…って、ん?これ何ですか?1つだけフツーのナイフ出てきたん…!」 突如、鼻先を掠めるナイフ。 「……何するんですか、ベルセンパーイ」 「それ触ってみ。殺す」 「…投げてきたのはそっちじゃないですかー」 軽口を叩きながらも、予想外の攻撃にフランは一筋の冷や汗を流す。 「チッ。これは投げるつもりなかったのに」 「…相当大事にしてるっぽいですけど、どーしたんですかー、ソレ」 「貰い物」 フランが空に放り投げれば、銀のナイフはきれいに弧を描いてベルの手中に収まった。 「ししっ」 うっすら、歯を見せベルは笑う。 「……雛香、元気してっかな」 「…この計画は、絶対にバレないように、僕と10年後の君、雲雀恭弥、そして雛乃君の4人だけの秘密だったんだ!!」 「「「!!!」」」 チェルベッロを眠らせ、突如ミルフィオーレの隊員服を脱ぎ捨てた入江は、信じがたい事実を紡ぐ。 その胸倉を掴み迫っていたツナ、そして未だカプセルの中に捕らわれたままの何人かは、告げられた言葉に息を呑んだ。 「10年後の雲雀君や雛乃君が、こちらの奇襲や動向を予想できたのもそのため……綱吉君、10年後の君は、最後まで関係のない仲間を巻き込むことを躊躇していたけれど、最終的には了承したんだ」 「ありえん!!沢田の性格はよく知っている!」 「そーだ!10代目はチビを巻き込んだりしねぇ!!」 「よくわかんないけどそーだそーだ!」 「事情把握してねぇのに口出すなアホ!」 荒れていく場の空気を壊すかのように雛乃が叫び、ツッコミ役と化した獄寺がきっちり手刀を入れる。 その横、雲雀に抱きかかえられたままの雛香が、やっと覚醒すると同時に目を白黒させ始めたことには、当然誰も気が付いていない。 「あーもー!それくらいヤバイ状況ってことでしょ?!話の流れで察してくれよ!」 「ヤバい、って…?」 「全てを懸けてこの事態に対処しないと、君達も、君達の仲間も全滅しちゃうんだって!!それどころかもっと多くの人々の…ヘタすれば、人類の危機なんだぞ!!」 眉をひそめたツナの前、ガシガシと頭をかきむしった入江が叫ぶ。 なぜか(それも10年前の)雲雀に抱きかかえられているという状況で、ただでさえ事態が呑み込めていないでいる雛香は、完璧に混乱したまま、カプセル越しに入江を見つめた。 だが、次の瞬間聞こえた名前にー 「…そう、君達の敵となるのはー白蘭サンだ」 ーなぜか、嫌な予感を覚えた。 |