I bite you to death! | ナノ

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二度目の初めまして


「……な、」

目の前、轟音を立て膨れ上がる球針態。
だがその大きな針が刺さる寸前、雛香の鼻先で匣兵器は動きを止めた。

「……は?え、待てよ…嘘だろ、」

尻もちをついた格好のまま、雛香は呆然と球針態を見上げる。
あたりには、何の音もしない。
耳が痛いほど静まり返った部屋いっぱいに、膨れ上がった球針態が鎮座している、ただそれだけで。

どこにも、あの男の姿は、もう。


「…ふ、ざけんなよ……おい、馬鹿やろう…」


ーずっと、君を待ってる。この未来で。


耳元で刻まれるように囁かれた言葉が、
鮮やかに心中で蘇る。


「…っざけん、な……!!」


最初から、そのつもりだったというのか。


「…この、…バカ雲雀…ッ!!!」


1人、球針態の外に取り残された雛香はギリギリと歯を噛み、
ひどく悔しげに顔をゆがめて、吐き捨てた。






「…っくしょ、」

何度悪態をついたかわからない。だがそんな事ばかりしていても仕方ない。何も変わらない。
雛香はごしごしと目をこすると、今にも緩みそうな涙腺を抑えて舌打ちをした。

完全に沈黙した球針態の中では、何が起こっているか全くわからない。
侵入すら叶わない雛香にできるのは、
ただ、雲雀の無事を願うだけ。

「…帰ってきたら、ぜってー1発殴ってやる」

腹立ち紛れにそう毒づいて、雛香は球針態をよけ歩き出した。
幻騎士が作り出した草花の間を進みゆけば、次第に血の匂いが濃くなってくる。

ーまさか。

嫌な予感に、雛香が思わず足を早めた、
その背後で、

突如、





《……やあ、雛香ちゃん》





そう、突然ー全く聞き覚えのない声が、した。


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