I bite you to death! | ナノ

表紙へ戻る


救援


「…こっち、だ!」
「雛香、君の感覚に間違いはないんだろうね」
「ああ。…むしろ、間違っていて欲しんだけど」

焦った表情で唇をぐっと噛み、雛香が白い壁に両手で触れる。

「…この向こう、に…」
「君の弟が?」
「…わからない。ただ、すごく…」
「すごく?」
「……嫌な予感がする」

心配の色をありありと浮かべた顔を見下ろし、雲雀は微かに嘆息した。
そのまま、ぐいと小柄な体を脇に押しやる。

「…え、」
「君はどいてて。ここは、僕がこじ開ける」

何か言いたげにすり寄ったケルベロスを完全に無視し、
雲雀は自身の匣にリングを嵌めた。







「……ボンゴレ、雨の守護者よ」

床に伏せ、動けずにいる山本へ、幻騎士は静かに言葉を紡ぐ。
その後方、同じく血に塗れぴくりともしない雛乃。

「貴様に敬意を表し、我が剣最高の一太刀で葬ってやる」

ゆっくりと上げられる、藍色の霧を纏った刃。
その下、山本は微かに呻いたが、それ以上動くことは叶わなかった。

「若き門外顧問を庇い、このオレに勝負を挑んだ…その姿勢は賞賛に値する」

雛乃は、動かない。
ラルは苦しげな顔で目を閉じたまま。


「−さらばだ」


鈍く光った切っ先が、山本の首を貫く間際ー




ドゴオォッ!!!



「……っ、お前な、こじ開けるっつっても程があるだろーがッ!!」
「煩いね、こうするのが1番手っ取り早いでしょ」
「お前は慎重さとか繊細さとか、どこの地の果てに置いてきたんだ…」


粉々にヒビ割れ沈む壁の向こう、
白煙と瓦礫に包まれて、2つの影が、そして奇妙な球体の影が、浮かび上がる。

「……な、」
「ああ、君…ちょうどいい」

呆然と立ち尽くす幻騎士の前、
球針態を引き連れ現れた雲雀が、僅かな動揺も見せず堂々と歩み進む。
その真横、呆れ切った顔で並ぶ黒髪の少年に、悠然と付き添う3首の黒犬。


「ー白く丸い装置は、この先だったかな?」


パリン、
軽い音を立て、雲雀の指先でリングが砕けた。


[ 136/155 ]
[] []

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -