I bite you to death! | ナノ

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思い出だけが積もる中


「よし!警備システムの破壊は成功だな」
「そんじゃあ主要施設の破壊に移ろっか!」

朗らかに物騒なことを言い放つ天然コンビ(笹川と山本)の背後、不機嫌顔をした獄寺が口を開く。
「ちょっと待てよ」
「ん?」
声をかけられた山本は、きょとんとして獄寺を振り仰いだ。

「アルコバレーノの話が済んでねえぞ」
「「!」」

そういえばさっき、アルコバレーノの謎について聞きかけて…と雛乃が呟く前、山本が真剣な表情に変わる。

「…約束でさ……授業が終わった時、小僧が教えてくれたんだ」
「なっ」「リボーンが!」
「こいつはたまげたな…オレだって師匠には聞けずじまいだったのに」

驚くツナ、獄寺、笹川の横、ひとりケロリとしている雛乃。

「ふうん…アルコバレーノの謎かあ。僕興味ないからいち抜けね」
「なっ…宮野、お前気になんねーのかよ!」
「えっ僕、雛香以外の事には基本興味ないよ。知らなかった?」
「「知ってた」」

何人かの声がきれいにハモる前、山本が再び言葉を紡ぐ。

「ただし、この作戦が終わるまでは話すなって…これも、小僧との約束でな」

「何」と不服そうに獄寺は顔をしかめたが、結局は引き下がり場は落ち着いた。
警報音のなくなった世界で、しん…とした静けさがやけに耳につく。

「…そんじゃ、行くかっ」
「だねえ」
「いや」

振り返る5人の先、
うずくまり動かない、ラル・ミルチ。


「ーおまえ達だけで、行け」







『ー俺だけで、行ってくるよ』

あの日閃いた黒髪に、
自分がなんと答えたか覚えがない。


「……バカげた話だと思わない?」

1人、静かに呟いて、白蘭は己の机の上へ手を伸ばす。

伝達係を始め、ほんのひと握り以外の人間は誰も入れない専用ルーム。
その机の上、仕事の書類と道具で占められた空間に、唯一のせられた小さな私物。

「……雛香チャン」

伸ばされた指の先、
何の変哲も無い木枠の中にー2人で写る、その写真。


「あの日、君を1人で任務に行かせなかったら…」


この時代に、まるで滑稽なほどの木枠の写真立て。


「…あの日、君が"ボンゴレの雲と弟"に出逢わなければ……」


ずっと自分の側にいた、あの存在。


「……君は、僕の隣にいてくれたよね」






写る2人の姿を残し、
日光に反射して光る写真は、何の言葉も返さない。



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